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イスラエルを二分する徴兵論争

高橋和夫 放送大学教養学部教授(国際政治)

 女性さえも徴兵するイスラエルの国民皆兵制度はよく知られている。しかし、「例外のない規則はない」との規則通り、この制度にも例外がある。イスラエル市民の4分の1を占めるアラブ人は徴兵されていない。またユダヤ人の中でも超オーソドックスと呼ばれる宗教に熱心な層も兵役につかない。毎年、超オーソドックスの若者6000人が徴兵年齢に達するのだが、義務を免除されている。

 アラブ人というのはパレスチナ人のことである。1948年のイスラエルの成立時に多くのパレスチナ人が故郷を追われ難民となって周辺諸国で生活している。しかし、故郷に踏みとどまったパレスチナ人も多かった。イスラエルでは二級市民的な扱いを受けているが、それでも市民である。その人口は、200万人に近づいている。イスラエル国家はアラブ人を信用していない。パレスチナ人に武器を渡して訓練するなど考えていない。

 超オーソドックスのユダヤ教徒は、日夜ユダヤ教の研究と子供作りに励んでいる。この人々を代表する政党の支持を取り込むために歴代の政府は、超オーソドックスの人々に徴兵免除の特権を与えてきた。

 こうした徴兵免除に対して多数派のユダヤ人の反発がある。アラブ人つまりパレスチナ人に対しては、兵役ではなく勤労奉仕という形での負担を求めようとの声が上がっている。しかし、パレスチナ人にしてみれば、イスラエル国家からさんざん差別され、恩恵を受けていないのであるから、この国家に対しての義理も義務もない。

 また超オーソドックスの人々は、男女の厳格な隔離などで知られ、女も参加するイスラエル軍になど入りたくもない。また普通の、つまり超オーソドックス以外のユダヤ人は、酒、セックス、麻薬などの世俗の毒にまみれている

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