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中国によるジャパン・ナッシングの始まりか?

鈴木崇弘 城西国際大学客員教授(政治学)

 尖閣問題で揺れ動く日中関係。そんな中、十数年ぶりに中国を訪れた。降り立つ前は、若干緊張したが、首都・北京は、現在の中国の躍進を示すダイナミズムに溢れ、日中間の緊張を感じさせるような雰囲気は、少なくとも表面的には全くなかった。

 翌日は日中関係や日本の政治などに関する会議だった。その翌朝ネットをみると、丹羽大使の車が襲撃されたという事件の記事が踊っていた。同日午前中は、中国社会科学院日本研究所(注1)の方々との会議だった。

 そこではその事件も話題になったが、私が最も驚いたことは、「我々の日本研究所を廃止するという話が最近あった。日本は重要な国だからということで説得して、何とかその廃止を踏みとどまらせ、阻止した」という所長の話だった。

 中国政府のシンクタンクともいわれる大きな影響力のある中国社会科学院(注2)は1977年に設立され、多くの研究所を要しているが、特定の国に関する研究所は、日本研究所と米国研究所の二つだけで、あとは地域や分野別の研究所から構成されている。

 つまり日本はこれまでは中国にとって、非常に重要な国であると考えられてきたということだ。その日本研究所を廃止するという案が俎上に上ったということは、ある意味、中国にとって日本の意味が低下している、あるいは意味がない、つまりナッシングの状況が生まれつつあるということではないだろうか。

 中国にとって日本は、歴史的にも精神的にも経済的にも、これまで非常に大きな意味をもってきた国である。また中国社会にとって、いい意味でもまた必ずしもそうでない意味でも、日本の存在は大きかった。今日、日中の経済的な関係性は密接であり、基本的には良好な関係にある。尖閣の問題が起きているが、それでも、両国ともその問題を基本的には穏便に鎮静化したいと考えているはずだ。

 逆説的にいうと、

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