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【中国共産党大会から】 百寿への延命策を探る中国共産党

藤原秀人 フリージャーナリスト

 中国共産党の第18回全国代表大会が11月14日、閉幕した。今回は10年に一度の最高指導部の大異動が何より注目された。いい意味でも悪い意味でも存在感を強める中国だから、その執政党の人事に関心が集まるのは当然だ。

 一方で、「中国共産党の執政は著しい効果を見せ、世界が注目している。中国を非難することが習慣になっているいくつかの西側メディアでさえ、党のまばゆい成績表を認めないわけにはいかない」(中国国営通信新華社)といった自画自賛の官製報道や、「科学的発展観」など共産党独特のジャーゴンにうんざりしたため、胡錦濤氏が8日の開幕時に読み上げた活動報告や大会中の議論に目を向けなかった人が多かったと思う。

 しかし、政策は人事と並んで重要であるのは洋の東西を問わない。

 そこで、15日発足の最高指導部人事を分析する前に、中国共産党が抱える課題に対してどんな方針を今大会で提起したのかを再点検してみよう。

 大会は北京の人民大会堂で開幕し、胡氏が第17期中央委員会を代表し、「中国の特色ある社会主義の道に沿って確固として揺るぎなく前進し、小康(わりあいゆとりのある)社会の全面的建設のため奮闘しよう」と題する報告をした。

 胡氏は「今回の会議は中国が小康社会全面完成の決定的な段階に入ったときに開かれる非常に重要な大会である」と指摘し、2020年までに、国内総生産(GDP)および都市・農村住民の一人当たりの所得の2010年比倍増を実現すると宣言した。中国共産党が個人所得の倍増目標を明確に提起したのは初めてだ。

 だが、これが実現しても「格差」の解消に直接つながるわけではない。人口の多い中国では「平均値」は意味を持たないことが多い。そこで、富の偏りを示す「ジニ係数」で現状を見る。ジニ係数は0~1で示され、1に近づくほど格差が拡大するとされる。中国では2010年に0・44となり、1980年代初めの0・28から拡大した。合理的な水準とされる0・3以下を超え、社会的な混乱を招きかねず「危険」とされる0・5に近づいている。

 ゆがんだ格差は、腐敗した役人や権力と結びつき富を肥やす企業家に対する庶民の憤怒を招き、あちこちで抗議デモや衝突が続いている。庶民の怒りをおさめるには、党がすべてに口を出すのを控え、司法部門や行政、企業の独立性を強めて、権力と富裕層のもたれ合いを減らさなければならない。公正な所得分配にも手をつける必要がある。

 胡氏も活動報告で「社会の公平・正義を保障するうえで重要な役割を果たす制度の構築を急ぎ、権利の公平、機会の公平、規則の公平を主要な内容とする社会公平の保障システムを徐々に築き、公平な社会環境づくりに努め、人民が平等に参加し、平等に発展する権利を保障する」と提起している。

 だが、具体性に欠け、「中国共産党は人民を団結させ、リードする」と党至上主義を変える気はない。

 対外関係では、胡氏の報告は

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