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日中関係は「政凍経冷」から「政冷経温」を目指せ

藤原秀人 フリージャーナリスト

■「良好」より、まずは「安定」を

 1972年に国交を結んでから最悪とも指摘される日中関係は、中国共産党の指導部交代と、日本の総選挙を経てどうなるのだろうか。

 中国共産党トップの総書記になった習近平氏は日本に対して厳しい。そんな声がよく聞かれる。根拠の一つとして挙げられるのが、野田政権が胡錦濤国家主席の直接の要請に反して尖閣諸島を国有化した直後の習氏の発言だ。

 9月19日、習氏は国家副主席として米国のパネッタ国防長官と北京で会談した。習氏は「日本軍国主義は米国を含むアジア太平洋国家に大きな傷を与えた」と第2次世界大戦で米中が同じ立場だったことを強調したうえで、日本の尖閣国有化について「日本の一部政治勢力は反省せず、茶番を演出した」と厳しく批判した。

 そして「米国が言動を慎み、釣魚島(尖閣諸島)を巡る主権争いに介入しないことを望む」と述べて、尖閣諸島に日米安保条約が適用されるという立場のパネッタ氏に釘を刺した。

 大国の指導者の言葉として「茶番」は品がないが、野田政権をまともに相手にしないのが中国指導部の共通認識だ。野田佳彦首相が出席したカンボジアでの東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議の場で、恒例の日中韓3カ国首脳会談は見送りとなった。1999年からほぼ毎年開かれてきたが、日中韓会議の今年の議長国の中国から首脳会談を調整する連絡がなかった。日中首脳会談も開かれなかった。

 それでは、中国新指導部の対日方針はどうなるか。

 中国国営通信社の新華社は習氏が総書記に就任した翌11月16日、中国国家海洋局が3000トン級の海洋監視船「中国海監137」を14日に中国海監東海総隊に配備し、東シナ海海域で定期パトロールに就かせると明らかにした。

 14日は第18回党大会の閉幕日だ。新華社によると、中国海監総隊の責任者は「中国海監137の配備は海洋権益を守るうえで非常に重要な意義がある。現在および今後、一定期間の海監のパトロール活動に対応するため、近く数隻の艦艇が配備される」と述べた。尖閣国有化から続く中国公船の尖閣諸島周辺海域での活動は当面終わらせない、と宣言したといえる。

 しかし、衆院が16日に解散し、日本の政権が変わる可能性が出た。この日の中国外務省定例会見で、洪磊報道官は「日本の選挙は日本の内政なのでコメントしない」と述べた。だが、「中日関係は非常に困難な局面を迎えている。現在の局面をもたらした原因はすべて日本側にある。当面の急務は、日本側が誠意をみせ、現実的行動をとり、中国側と共に現在の問題を解決し、両国関係を改善することだ。そのために日本側が着実な努力を払うことを望んでいる」とも語った。

 「現在の問題」とは尖閣問題にほかならない。野田政権が続いた場合、領土問題の存在を認める可能性はまずないだろう。もし認めれば、「国有化」の責任が問われるだけでなく、最近の日本で流行する「弱腰」という批判を受けるだろう。

 それに、民主党には政権交代を果たしたときの勢いはなく、政権を維持してもパワフルには振る舞えまい。そんな民主党政権に中国がただちに正面から向き合うことは予測しがたい。様子見が続くだろう。

 では、自民党が政権に復帰すればどうだろう。

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