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新しい米中関係に備えよ

藤原秀人 フリージャーナリスト

 米国のオバマ大統領と中国の習近平国家主席による首脳会談が米カリフォルニア州パームスプリングス近郊のリゾート、サニーランズで開かれた。ノーネクタイでくつろいだ雰囲気だったという会談は異例の8時間にも及び、両首脳は「新しい米中関係」を目指すことで合意した。

 新しい関係とは、これから肉付けされるものなので明確な内容を伴っていない。オバマ大統領が「軍同士の意思疎通の強化は、米中の新しいモデルの関係を進展させる具体例だ」と報道陣に語ったように、米国側は軍事力の増強にまいしんする中国との間で不測の事態を招かない安定した関係を望んでいる。

 また、深刻なサイバー攻撃問題や地球温暖化問題で、責任ある大国としての役割を中国が果たすようにも求める。オバマ大統領の言うように「平和的に台頭する中国なら歓迎できる」というわけだ。

 一方の中国側が描くのは、「新たなタイプの大国関係」。習主席は副主席として2012年に訪米した際に「広大な太平洋には両国のためのスペースが十分ある」と述べて、太平洋地域で存在感を強める意欲を露骨に示し、関係国を驚かせた。

 習氏は今回の訪米でも、この考えが変わっていないと表明した。オバマ政権の「アジア回帰」を中国の周辺国を巻き込んでの「対中包囲網」と見る向きが中国では少なくない。習氏の考えは太平洋で米国に対等の扱いを求めたものだ。中国は世界中で米国と対等な立場を求めていくに違いない。

 しかし、米国側が中国に求めるのは軍事でも経済でも人権でも、国際ルールの順守であって、習主席の唱える富国強兵を正面に据えた「中国の夢」の実現ではあるまい。

 だからといって米中が目指す新しい関係を「同床異夢」とは決めつけられない。

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