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秘密保護法案、マスメディアの人間は組織の「空気」とどう向き合うか

金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

 特定秘密保護法案について書く。と言っても、この法案の中身の検証ではない。この法案は端的に言って欠陥法案であり、このまま法制化されると取り返しのつかないことになる。私たちマスメディアで仕事をしている人間にとっても、その拠って立つところの「取材・報道の自由」が著しく制限され、ひいては国民の「知る権利」が大きく侵害される。

 現時点(11月20日)では、まだ特定秘密保護法案は衆議院を通過していないが、与党(自公)とみんなの党や日本維新の会との間での修正協議がさくさくと進捗しており、来週中にも衆議院で採決が行われるのではないかとの見通しだ。

 そうした状況のなかで、マスメディアで仕事をしている有志らが集って、この法案の廃案を求める小さな集いと、森雅子担当大臣への要請文提出を行った(20日の午後3時)。これからどういうことになるのか、わからない。僕もボランティア・ベースで、賛同者へのお誘いなどをやった。

 そんなことをしていくなかで考えたことがある。それは、メディア論の世界では「メディアの内部的自由」などというカテゴリーで括られている問題だ。

 マスメディアで働く記者やディレクター、編集者、制作者らが、自分の報道倫理とは相容れない報道や表現を所属組織から命じられた場合にそれを拒否できるかどうか。一方で、「メディアの内部的自由」は、自らの報道倫理に照らして見解を表明せざるを得ない場合に、個人として所属組織との間でどのような折り合いをつけるのかという問題とも隣接している。

 賛同者にお誘いした人の反応のなかに、「特定秘密保護法案に対する反対表明の趣旨には『個人的には』もちろん賛成だが、自分は組織に所属している人間なので、今、賛同者に加わることができない」という人がいた。

 あるいは、僕がお誘いをすると、すぐさま上司に許可を取りに行くという行為にとりかかった人もいた。「個人参加で」と断ったつもりだったが、条件反射的に上司に許可をとるという動作が、その組織では一般的なのですよと説明された。

 そうかと思うと、何の躊躇もなく、即、加わりましょう!と言う人もいた。正直に言えば、僕は何だか自分が「踏み絵」を用意しているような嫌な気分になったこともあった。

 たとえば、NHKの内部がどうやら今、とても

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