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今こそ政策競争と政策市場を創り出していくべきだ!(続)――独立系シンクタンク産業を創ろう

鈴木崇弘 城西国際大学客員教授(政治学)

 先の拙記事「今こそ政策競争と政策市場を創り出していくべきだ!」(8月18日付)において、独立系のシンクタンクが共同活動を行い、現在の立法や行政において低下している政策論議を刺激し、「政策競争」が起きるようにしてはどうだろうかと提言した。

 その提案は短期的な提案だったが、日本における政策形成は、民主社会を運営していく上で必要とされる「民意(政治的要請)」と「複数の専門性」のバランスが取れるように政策情報源の多元化が担保されていないのが現実だ。要は、政策情報のほとんどが行政に独占され、その情報を、多元的な観点から比較検討して、より民主的かつ客観的に政策を検討できる仕組みがつくられていないのである。

 そのような現状を変えていくためには、行政から独立して政策研究を行い、政策情報を創り出せる研究機関、つまり独立型のシンクタンクがつくられる必要がある。

 ご存じのように日本にも、何百ものシンクタンクが存在する。だが、そのほとんどは、行政や親組織との関係が強く、行政からの委託研究を行ったり、システムエンジニアリングなどがメインの収入源であったりで、行政とは異なる政策情報源としての役割は非常に弱い。

 つまり、日本のシンクタンクは研究機能としての役割はあるが、世界的に「シンクタンク」に求められる役割(立法や行政から独立した形で研究し、政策情報を創り出し、政策形成における多元化を実現する役割)を果たしているとはいえない。

 また、これらのシンクタンクは、各組織の設立や運営には熱心でも、政策形成における多元性の実現など民主主義的役割への意識は希薄であり、それらの組織を社会環境的に形成、育成していこうという意識や自覚が弱かったと考えられる。

 もちろん、シンクタンクの交流機関であるシンクタンク協議会や地方シンクタンク協議会などもつくられはしたが、当時シンクタンクの活動は行政からの委託研究が主流であり、お互いが競争相手で、業界や産業を形成していこうという考えは生まれにくかった。

 さらに、当時は、高度成長時代で社会の方向性は大体決まっており、政策形成における多元性も必ずしも必要とされなかった。つまり、業界や産業を形成する必要性やインセンティブがあまり高くなかったといえるのである。

 筆者は、このような問題認識から、この25年間ぐらい、東京財団など独立系のシンクタンクをつくる活動をしてきた。

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