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[4]沖縄・読谷村の「不戦の誓い」

伊藤千尋 国際ジャーナリスト

 日本国憲法9条の記念碑は、沖縄だけで6つある。

 中でも出色なのは、沖縄本島の中部にある読谷(よみたん)村の記念碑だ。読谷村は第2次大戦末期の沖縄戦のさい、沖縄本島に米軍が最初に上陸したところで、この村だけで3700人以上の住民が亡くなった。

読谷村の「憲法9条の碑」。「萌芽」と題した彫刻を掲げる読谷村の「憲法9条の碑」。「萌芽」と題した彫刻を掲げる=撮影・筆者
 読谷村役場の玄関の前には高さ3メートルほどの四角いコンクリートの柱が立つ。

 柱の中ほどには、銀色の金属板に黒い字で「日本國憲法第九條(戦争の放棄)」と旧字体で憲法9条が刻んであった。

 柱の上には、植物の新しい芽が地中から天に伸びていく姿を現す「萌芽」と題した青銅の彫刻が乗っている。

 役場に入って「あそこに建っているのは憲法9条の記念碑ですか?」と聞くと、職員は「そうです」と答えた。沖縄戦の終結から50周年を記念して、つまり1995年に作ったのだ。

 詳しい資料を出してくれた。この記念碑を作るにあたっての趣意書だ。そこには、こう書いてある。

 「人間の欲望から発する戦争に対し、我々の中には生来の生きることへの願望がある。すべての生命が当り前にその一生を終えることができる社会、平和なうちに生命を次ぎへとつなぐことのできる社会こそ私たちの願い。その社会の実現を信じよう。我々自身の力を信じよう。世界中が9条の精神で満ちることを信じよう。それは、誰にも阻止できない植物の萌芽と同じ、生命の躍動につながるのだから」

 希望と意欲にあふれた堂々とした文章だ。小さな村から全世界に平和を発信しようという気概を感じる。

 とはいえ「世界中が9条の精神で満ちる……」というくだりに疑問を抱いた。

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