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神社が改憲運動をしていいのか(上)

「宗教の公共性」に照らして考える

小林正弥 千葉大学大学院社会科学研究院教授(政治学)

神社の改憲運動

 安倍首相は新年の施政方針演説で改憲への意欲を示した。これに呼応するかのようにお正月の境内に署名用紙を置き、改憲への署名を募っている神社があった。初詣に来た一般の人々の中には驚いた人も少なくなかったのではないだろうか。

初もうでの参拝者でにぎわう播磨国総社=姫路市総社本町全国、どこの神社も初詣の参拝者でにぎわった=2016年1月1日、兵庫県姫路市総社本町播磨国総社(本文とは関係ありません)
 一部の神社だけがこれを行っているのではなく、宗教法人・神社本庁によると「『美しい日本の憲法をつくる国民の会』」の運動の一環として、各神社が実情にあわせて署名集めをしている」のだという。

 この会は憲法改正の実現を目指して2014年10月に発足し、神社本庁の総長が国民の会の代表発起人の1人である(東京新聞、2016年1月23日付)。

 神社本庁の政治団体「神道議員政治連盟」には衆参あわせて303人の議員が属し、安倍首相をはじめ内閣の中で5分の4以上もの閣僚が加わっているという。

 このような状況を見ると、多くの神社が安倍内閣と連動して改憲運動をしていると見られても仕方ないだろう。

 その改憲を求める署名用紙の表現は「憲法の良い所は守り、相応しくなくなったところは改め……」というようにソフトな表現になっている。

 けれども、自民党の改憲草案などもあわせ考えると、神社界のこのような動きは戦前のような「国家神道」の復活を狙っているのではないかという批判が現れている。改憲草案第20条では政教分離から神社を例外にしようとしているのではないかという疑いが出されているからである。

 この署名運動をどう考えるべきだろうか。

政教分離には反しない

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