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[3]太った市民、音楽の国の日常生活

伊藤千尋 国際ジャーナリスト

 ハバナの空港から外に出たとたん、社会の変化を実感した。

 目の前にいる市民の大半が太っている。キューバでは経済状態が国民の体格にそのまま反映する。訪れるたびに国民が太っていたり痩せていたりするが、今回は特段に太っていた。食生活が豊かになった証拠だ。

サトウキビのジュースを売る人々=ハバナ郊外でサトウキビのジュースを売る人々=ハバナ郊外で 撮影・筆者
 街にレストランが増えた。その大半が自営業だ。

 メニューの品目は多彩でイセエビのグリルまである。

 イセエビはカリブ海で豊富に獲れ、かつては大半が日本に輸出されていた。

 国家評議会議長だったフィデル・カストロが演説でイセエビに触れ、「食べてしまえば1週間の給料分、金持ちの日本に輸出して外貨を稼げば赤ちゃんに無償でミルクをやれる。どちらがいいか」と国民に問うたのは1980年代だ。今は普通に出回っている。

 普通の市民がよく利用する豚肉のレストランに行くと、数年前よりも客がひしめき、駐車場は自家用車でいっぱいだった。以前はメニューが限られていたが、今は壁の黒板からはみ出すほど料理の品目が増えている。

若い女性はダイエットも

 80年代はもちろん、ソ連の援助がなくなった90年代初め、キューバ人は見るからに痩せていた。

 今や太っただけではない。

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