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[5] 日本政治はどこへ向かうのか

我々が立ち上がって声を上げ続けることが大事

中野晃一 上智大学国際教養学部教授・政治学(日本政治、比較政治、政治思想)

注)この立憲デモクラシー講座の原稿は、1月8日に早稲田大学で行われたものをベースに、講演者が加筆修正したものです。

立憲デモクラシーの会ホームページhttp://constitutionaldemocracyjapan.tumblr.com/

講演する中野晃一教授講演する中野晃一教授
 

 問題はこれをどうやって永田町に持っていくのか。議会に持っていくのかというところで、本当は皆さんが一番聞きたいところかもしれないんですけれども、一番話しにくいところなのでここで終わっちゃうんですが(笑)。

 Q&Aがあるので、答えられる範囲ではお答えしたいと思います。ここのところを、ずーっと振り返ってきて、私自身もいまほかの方たちと一緒になって市民連合として立ち上がって、のろのろと動き出しているのですけれども、本当にノロノロで申し訳ない。いろんなところからお叱りを受けていて、本当に申し訳ないと思っているんですが。まあ今日もチラシを配っていただいたように、1月5日に新宿の西口で街宣をやって、1月23日に今度シンポジウムを北とぴあさくらホールでまたやるわけですけれども。そういったことをメインでやっているわけではなくって、実は野党共闘ということで、安保法制のその撤回、集団的自衛権の行使容認の撤回を含む立憲主義の回復、個人の尊厳を守るような政治を実現しようということで、こういった理念に共有する候補者を推していき、できるだけ歯止めをかけて、好転させていきたいと。

筋を通して闘い続ける

 いまの段階で正直言って見通しは非常に暗いと思います。このまま行ったら本当に危ないと思います。これは皆さんもそう思っていると思います。どうなっちゃうんだろうと思いますね。しかし市民運動ですから、市民社会ですから、我々は存続し続けるしかないんです。政党のおしりを叩いて、政党に「何とかしろ」っていうふうにやるわけですけれども、選挙の結果がどうであったって、我々は続ける以外ないわけですから。短期的に頑張るところは頑張るけれども、筋を曲げないところは曲げない。我々として頑張るところは頑張って、政党がどうなろうと、その後まだ闘っていく。そういうつもりで取り組んでいます。

 まあここから、本当に大事なのは、我々が立ち上がって声を上げる、そういう広がりをつくっていくこと、それ以外にないと思うんですね。それはもう始まっていると思うんです。これを育てていって、広げることができれば、私はいずれ、正直言って5年後とか、10年後とかになるかもしれないけれども、振り返ってみて、「あんなひどい時代があったね」ということが言えるように、いま頑張ることを頑張っていきたいというふうに思っています。ご静聴ありがとうございました。(会場・拍手)

~質疑応答~

Q:「日曜討論」で見て、ものすごく先生に感銘しています。私は「週刊金曜日」とか「マスコミ市民」とかに教育系の記事を書いている者ですけれども、今度の選挙、18歳選挙権に伴って、中学、高校での主権者教育、いわゆる政治教育をしていくわけですよね。そこで政治的中立性というのは、私、非常に怖いと思うんですね。文部科学省の言う政治的中立性というのは、政府の見解を教えることじゃないかっていう懸念をしています。というのは、横浜市立中山中学校というところで、鈴木という予備自衛官の教員がですね、生徒10人を富士総合火力演習、ズドーン、ズドーンってやつですよ、あの予行演習に連れて行った。校長などはそれに対して「自衛隊は公的機関だからそれでいい」。要するに横須賀のデモなんかに連れて行くのはいけないけど、自衛隊へ連れて行くのは公的機関だからいいんだと。山口県の柳井高校の現代社会の授業なんかでは、安保法制について取り上げて、模擬投票をやったら、それは「偏向だ」と自民党が言う。やっぱり政治的中立性っていうのは、抑止力を教えることになっちゃう危険性がある。ここを懸念しているんですね。

 もう一つ気になっているのはですね、文科省の小松親次郎さんという初中局長の通知が、「教員は個人の意見を言うな」っていうんですね。これも「先生どう思いますか?」と聞いたときに答えないと。生徒にとっては不信感を招くと思うし、結局政府見解を教えることになっちゃうんじゃないか。ものすごく懸念しています。君が代とか、自衛隊とかそういう問題で政府の見解ばっかり教えられたら、参院選で負けちゃいますよ!

民間団体と連動する形で攻撃が来る

中野:はい。ありがとうございます。おっしゃる通りで、私もその点は非常に心配しています。すでにマスコミに関してはいろんな形で出てきていますよね。最近で言えば、TBSの「ニュース23」のキャスターを務めていた岸井成格さんの降板の件であるとか。もっとその前に「報道ステーション」でコメンテーターをしていた古賀茂明さんの降板もありました。最近では、直接関係あるかどうかはわかりませんが、同じく「報道ステーション」のキャスター、古舘伊知郎さんであるとか、あるいはNHKの「クローズアップ現代」で司会をしていた国谷裕子さんも降板するということで、だれかが「今回降板させられた人、みんな選挙に出せばいいんじゃないか」みたいなことをおっしゃっていた。確かにすごいメンバーがそろうな、みたいなことはありますけど。それは実現できないと思いますが、いずれにしても、4月以降のテレビってどうなるんだろうな、みたいところがすでにあるわけじゃないですか。もともとひどかったのがどんどん、どんどんひどくなっていくと。要は多少刃向かうと言いますか、服従しないと、それは「偏向報道しているんだ」ということで、攻撃にさらされる。

講演する中野晃一教授講演する中野晃一教授
 その手法は一貫していまして、必ず民間団体と連動する形で攻撃が来るんですよね。だから岸井さんのときもよくわからない「放送法遵守を求める視聴者の会」などが出てきました。こうした動きは、1990年代の後半以降の特徴だと思っているんですが、日本会議が97年にできるわけですが、あの頃からの流れで、要は「草の根右翼」というようなところと、マスコミ、出版社だとか、そういったところが結託をして、政治勢力と一緒になってキャンペーンをやっていく、連係プレーをやるわけですね。だから日本会議の場合にも様々な人が入っていて、その中にはメディア関係者だとか、財界の人たちも入っていて、また政治家ももちろん、日本会議国会議員懇談会という形であるわけですけれども、そういう連係プレーをするようになったっていうのが、ここ20年ぐらいの現象なわけです。

 それで、ついにこうやって自分たちの一番大事なプリンスを再登板させることに成功して、いまその政党システムの中で歯止めがない状況になっていますから、いよいよ憲法に手を出す、あるいはいままで手が出せなかった内閣法制局であるとか、NHKであるとか、そういったところに手を出してくるという状況に、いまなっているんだと思うんですね。

 岸井さんに対する攻撃というのもまた同じような形で行われたわけですけれども、

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