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議員候補者「男女均等」の努力義務規定は画期的

大きなポテンシャルのある「政治分野における男女共同参画推進法」、今国会で成立を

三浦まり 上智大学法学部教授

女性の政治進出を議論したシンポジウムで「女性議員倍増宣言」を採択し、気勢を上げる参加者=2016年4月、東京都千代田区の上智大学
 「政治分野における男女共同参画推進法」(以下、推進法)が今国会で成立する見通しであるとの報道が出ている 。推進法は女性議員を増やすことを目的とするもので、超党派の「政治分野における女性の活躍と参画を推進する議員連盟」(中川正春会長、野田聖子幹事長、行田邦子事務局長)が準備をしてきた。筆者は議連のワーキングチーム有識者アドバイザーとして法案策定に関わってきたので、成立に向けての国会の動きを歓迎したい。

 なぜこの法案が必要で、どの程度の効果を持つものなのか、確認してみよう。

日本の女性議員比率は193カ国中164位

 推進法は国会や地方議会の選挙において、候補者の男女数をできるだけ「均等」にするよう政党に努力を求めるものだ。前回の衆院選(2014年)では女性の候補者は16.6%、当選者では9.5%、参院選(2016年)では候補者の24.7%、当選者の23.1%だった。今年の7月に選挙が予定される都議会は19.8%の女性比率だが、都道府県議会の平均は9.8%にすぎない。

 日本の女性議員比率が国際的に見てどのくらい低いかといえば、下院(衆議院)で比較すると2017年3月現在、193カ国中164位である。しばらく150位台で推移していたのだが、小池百合子氏が都知事選に出馬するために衆議院議員を辞職し、比率が9.5%から9.3%に下落したことが響いて、とうとう160位台にまで落ち込んだ。日本はOECD加盟国の中で最低、世界的に見ても最下位グループに属する。各国が女性議員増加のために積極的な取り組みを講じる中、日本が何もしなければ、順位はさらに落ちていくだろう。したがって、推進法によって、候補者を「均等」にするという努力義務が課せられることは画期的なことなのだ。

女性議員の比率の問題は民主主義のバロメーター

 そもそもなぜ女性議員の少なさが世界的に問題になっているかといえば、それが民主主義のバロメーターとなりうるからだ。人口の約半分を占める女性が議会において少数派であるということは、女性が選挙に出にくい仕組みが事実上存在することを意味する。それは、政治家に転出しやすい職業(官僚や弁護士など)に女性が少ないこともあるだろうし、家族的責任と政治家という職業が両立しにくいという構造的な問題もある。またほとんどの政治家が男性であるために、有権者が政治家に男性らしさ(統率力や交渉力など)を求めることが多く、女性が政治リーダーとして男性的に振る舞えば嫌われ、女性らしくすれば能力が低いと見なされるステレオ・タイプの影響も指摘されている(ヒラリー・クリントンが「嫌われている」と言われたのも、この女性リーダー特有のステレオ・タイプの影響があったからだ)。

女性は選挙に出にくい状況に置かれている

 確かに選挙制度上、男女は同じように扱われる。しかしながら、表面的な男女平等ではなく、出馬に至るまでの実際の道のりを見てみれば、家族が選挙を手伝ってくれる男性や、女性にとってはダブル・スタンダードとなっているステレオ・タイプに悩まされない男性は、スタートラインで優位に立っていることがわかる。このことはつまり、単に男女の相違というだけではなく、家族的責任を負う男性やトランス・ジェンダーの男性もまた不利な立場にあることを意味する。

 また、選挙制度も女性の政治参加を阻む壁となっている。小選挙区では地元選挙区での日常的な政治活動が再選のために不可欠で、家族的責任と両立させることが難しい。比例代表の方が女性をはじめ多様な人々が出馬しやすいことは、政治学では常識となっている。

 選挙への出やすさに関して、性別や家族状況、セクシュアリティ、そして経済状況が一定の影響を与えている以上、

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