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29時間で身につく「にわか韓国語講座」(4)

第1章 3.発想や言い回しが同じ 4.考え込む、あいまい表現も同じ

市川速水 朝日新聞編集委員

全盛期の「KARA」。「観客の皆さんと呼吸を合わせて一緒に楽しめるライブが好き」と話していた=2011年
 アンニョンハシムニカ!

 始めてから3週間、3時間分やってきました。今回は総論である第1章の締めくくりです。

「そう?」「ふーん」日本語並みのテンションで許されます!

 私は、外国語を勉強する時、話す時に最も重要なことは、自分にストレスがたまらないようにすることだと思っています。

 例えば、英語で「なるほど」「そうですか」「本当に?」などの相づちが得意ではありません。それは言葉を繰り出す文化が違うからだと思っています。日本語だと「そう?」「ふーん」などと適当に返しているのに、英語になると、口角とテンションを上げて「グレイト!」「ファンタスティック!」「リアリー?」などと振り絞らないといけないからです。私の思い込みも多少あるのでしょうか…。

 その点、韓国語は、ほぼ日本語並みのテンションで許してくれます。頭の中で、主語と述語を入れ替えたり、難しい単語を引っ張り出したりする必要もありません。

 冒頭の写真は、日韓で活躍しK-POPの火付け役でもあったKARAです。どこにでもあるような小さな恋や出会いを分かりやすい言葉と軽快なメロディーで歌いました。

 「アンブレラ」という曲の出だしは、日本語バージョンでは「あなたを見てると胸がふるえる」と歌うのですが、さて、「あなた」は韓国語バージョンでは何と言うのかと気になりました。いろいろな言い方があるからです。実際聞いてみると、「ノ」でした。「あなた」の言い方の妙については「ちょっと寄り道」で触れることにします。

「あるかもしれませんよ」あいまいな言い方が使えます!

 「韓国語は文法が日本語と同じ」と聞いたことがあると思います。一部を除いてその通りです。文法がほぼ同じであれば、「私は、電車に、乗りたい」と1文節ごとに日本語に置き換えて考えることができて楽ですよね。

 さらに、英語や中国語と決定的に違う点は、日本語特有の「中途半端なあいまいな言い方」が、同じようなあいまいな発想や言葉でそのまま使えることだと思います。ストレスが脳にたまらない、これは外国語として奇跡的です。

 例えば、家を出る時、家族によく「行って来ます」と言いますね。なぜ「行きます」ではないのか。無意識のうちに「行って+来る」、つまり、また帰ってくるからね、という構造になっています。韓国語も同じなのです。「行って+来る」(タニョ・オゲッタ=다녀 오겠다)という言い方をします。

 また、「やってみる」と言いますよね。「やって+見る」と分解できます。これは「試しに」「ちょっと」という意味を含んでいますね。韓国語も同じです。「○○してみる」(○○해보다=ヘポダ)と言い、ニュアンスも同じです。

 日本語には、「あるかもしれませんよ」というあいまいな言葉もあります。「ある」「かも」「しれない」。ないかもしれないけど、ある可能性を言っているのですね。これまた韓国語では「ある+かも+知れない」(イッスル・チド・モルヌダ=있을지도 모른다)とつなげて言えば通じます。

 「そうとは知らなかった」も「そう+とは+知らなかった」(クロル・チュル・モルラッタ=그럴 줄 몰랐다)です。

 よく日本語は難しいと外国人に言われるのが、言葉は否定しながら実際は肯定的な意味を含んだ言葉です。「~したらいけないですか?」「○○さんは、いらっしゃいませんか?」などです。韓国語でも同じ構造です。

 ちなみに「していただくとありがたいのですが」という遠回しな言い方。これも同じです。

「て・に・を・は」にあたる助詞もあります!

日曜日のバスターミナル。兵士が休暇を終えて部隊に戻る前に別れを惜しんでいた=ソウル
 ここまで読んでいただいて、むしろ日本語の言い回しの不思議さを再発見された方もいるのではないでしょうか。

 「自然に使っていたけど、そうだったのか」と思った方もいるでしょう。「○○さん、いらっしゃいませんか」という電話の言葉は、なぜ「いらっしゃる」ことを望みながら逆の言い方をするのか? 韓国語でもそういう言い方をします。

 「て・に・を・は」にあたる助詞もちゃんとあります。

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