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SNSを使い切れない野党がやるべきこと

総裁選、沖縄県知事選でSNSを活用する自民党。国民民主党はLINEの活用に活路を

高橋 茂 ポリティカル・コーディネーター

新総裁が選出された後、両院議員総会で万歳する自民党の国会議員たち=2018年9月20日、東京・永田町の党本部新総裁が選出された後、両院議員総会で万歳する自民党の国会議員たち=2018年9月20日、東京・永田町の党本部

 9月20日、自由民主党の総裁選で安倍晋三氏が3選を決めた。ここで総裁選の結果について言及するつもりはない。筆者が注目したのは、総裁選で自民党がとったSNS戦略だった。結論から言えば、実に積極的に発信を行っていた。

 いまや、世論形成に大きな影響を与えるSNSは、政党にとって無視できないツールである。そこで本稿では、政党とSNSとのかかわりを概観したうえで、野党がSNSを使って自民党に対抗する方法についても考察・提言したい。

「LINE@」でそつなく発信

 私は8月13日、WEBRONZA「支持率1%!残念な野党の重要な役割」で国民民主党のネット戦略について分析するとともにエールを送った。それは、しばらくは自民党の政権が続くとしても、いずれは政権交代のできる野党を育てることこそが、強大な与党の暴走を防ぐ唯一の方法だと考えるからである。

 その後、自民党では総裁選が、国民民主党では代表選挙があった。その際、両党はどのようにSNSを活用しただろうか。

 まずは自由民主党である。

 自民党は総裁選においても、党内につくられた「ネット戦略チーム」に若い人が主体の業者を取り入れ、積極的に情報発信を行っていた。ちなみに、激戦が続く沖縄県知事選挙においても、佐喜真淳候補の応援メッセージを連日、大量に発信し続けている。

 とりわけ顕著なのは、最近ネット選挙の有力なツールとして利用率が飛躍的に伸びている「LINE@」を使いこなしていることである。テキスト、写真や動画、そして特設サイトへのバナーなど、そつのない発信に取り組んでいた。

 一方、国民民主党はどうか。

 自民党が使いこなしていたLINE@に関して言えば、発信の格好の機会である代表選挙の期間中でさえ、決して活発とは言えなかった。玉木雄一郎氏、津村啓介氏のふたりの候補者のうち、玉木氏の情報を発信しただけ。代表選そのものについての情報は、まったく掲載されていなかった。

国民民主党の代表選を戦った玉木雄一郎氏(左)と津村啓介氏=2018年8月22日、東京・永田町の党本部国民民主党の代表選を戦った玉木雄一郎氏(左)と津村啓介氏=2018年8月22日、東京・永田町の党本部

SNS、各党の得手・不得手

 LINE@に対する政党の熱意の多寡は、登録者数に如実に表れるはずだ。実数(9月24日現在)を見てみる。

国民 71072
立憲 7138
自由 624103

 国民民主党の登録者数が、立憲民主党の10倍もあることに驚いた方もいるかもしれないが、これは国民民主党のアカウントが民進党から継続しているためだ。民進党は民主党のアカウントを引き継いでおり、そうした積み重ねがこの数字となっている。

 国民民主党のLINE@登録者数は自由民主党の約9分の1にとどまるが、立憲民主党は自由民主党の約90分の1なので、それに比べればまだ勝負になると考えられる。

 ちなみに、他のSNSはどうだろうか。

●Facebookページ(「いいね!」とフォロワー数 9月24日現在)
国民民主党 582/767
立憲民主党 45729/60651
自由民主党 99331/108281

●Twitter(フォロワー数 9月24日現在)
国民民主党 3916
立憲民主党 176431
自由民主党 150991

 立憲民主党は、Facebookでは自民党の半数だが、国民民主党に比べると、それなりに健闘している。また、Twitterでは自民党をしのぎ、この3党の中ではトップとなっている。これらの数字を見る限り、立憲民主党はまずはFacebookとTwitterにいっそう力を入れるべきだろう。LINE@については、当面は登録者数を地道に増やす努力をする、というあたりだろうか。

LINEを使いこなす政党や候補者が有利

 国民民主党にとっては、今のところ、LINEが有効なツールだと言える。ただ、これまでの「実績」を見ると、先述した代表選挙における中途半端な発信の前には、今年6月に行われた新潟県知事選挙の際の発信まで、ほとんど使われていない。これでは、せっかくの有効なツールを自ら捨ててしまっているに等しい。

 総務省が発表した平成29年度版の情報通信白書によると、SNSの中で最も利用率の高いのは、ダントツでLINEだ。具体的には、
LINE 67.0%
Facebook 32.3%
Twitter 27.5%
となっている。全体の利用率も71.2%で、2012年(41.4%)の倍近い。

 世代別にみてみると、LINEはすべての世代で他のSNSよりも利用率が高くなっており、とりわけ20代の男性では94.6%、20代の女性にいたっては98.1%と非常に高い。SNSが苦手だとされる50代でも、
LINE 53.8%
Facebook 23.5%
Twitter 14.2%
と、LINEの利用率は他のSNSを圧倒している。

 とすれば、結論は明白だ。SNSのなかでも、特にLINEを有効的に使う政党や候補者こそが、選挙でも有利になるのである。

沖縄県知事選でも積極的に発信する自民党

沖縄県知事選で戦った佐喜真淳氏(左)と玉城デニー氏=2018年9月11日、那覇市沖縄県知事選で戦った佐喜真淳氏(左)と玉城デニー氏=2018年9月11日、那覇市

 ところで、30日の投票日に向けて激戦が続く沖縄県知事選挙においても、自民党は劣勢と言われながら、積極的に佐喜真氏の情報や応援のメッセージをSNSで発信している。

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