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[112]ゴーン逮捕? 一体何が?

金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

カルロス・ゴーン会長が乗っていたとみられる飛行機(写真奥)。19日夕、羽田空港に到着した=2018年11月19日午後7時46分、羽田空港カルロス・ゴーン会長が乗っていたとみられる飛行機=2018年11月19日、羽田空港

11月13日(火) 狭い機内で一睡もせずに、ひたすら本を読んでいた。辺見庸の『月』読了。僕はてっきり大江健三郎の『政治少年死す――セブンティーン第二部』のような作品なのでは、と勝手に思い込んでいたのだが、とんでもない、むしろセリーヌとかドストエフスキーのような、人間の生存の意味を根源から問い直す欲求を突き付けられたように覚知した。まいった。

 成田空港には14時45分に着陸。頭の中がもうろうとしている。そのまま局に寄ることもなく帰宅する。本当に久しぶりに肩までつかる日本式のお風呂に入った。この快感。浴槽のなかで眠ってしまいそうになる。途轍もない疲労感。

11月14日(水) 朝起きて本当に久しぶりにプールに行って泳ぐ。留守にしていた間、日本で何が起きていたのか。アップデートする気もなくなるほど何だか遠い世界の出来事のように思えてきてしまうから、困ったものだ。

 安田純平さんの記者会見が二度あった。11月2日の日本記者クラブと9日の外国特派員協会での会見。どちらも毅然としていた。元徴用工の韓国大法院判決があった。メディアが朝日から産経までこぞって反発したようだ。入管法の改正が強行されようとしている。国会では、片山さつき地方創生相や桜田義孝五輪担当相の資質・適格性が問われているとか。たまっていた郵便物を整理しながら、人間の現実なんて、どこにいるかによって全く違うものになるんだなあ、と当たり前のことを今さらながら実感した。

 夕方から神保町で打ち合わせ。時差ボケがとれない。

品格と含羞を含んだ報道番組をみて

11月15日(木) 「毎日新聞」のテレビ評の文章と「週刊現代」のコラム。テーマが重なるのはイヤなので、元徴用工判決と米中間選挙で書き分けた。

 午後、横浜で演劇をみる。アーサー・ミラー原作の『セールスマンの死』。風間杜夫が主役を演じる。セールスマンが象徴していたのは、アメリカンドリームだったかもしれないし、資本主義への信仰だったかもしれない。多くの観客は、僕自身も含めて、主人公に自分を仮託して観ていたのではないか。その意味で実に怖い舞台だった。長男が慟哭するシーンが心に残った。東京に戻って四谷で会食のあと、新宿のE。

11月16日(金) 朝日の朝刊に驚くような記事が出ていた。日本とロシアの北方領土交渉で、安倍首相がプーチン大統領に対して「もし歯舞・色丹という2島が返って来ても、そこには米軍基地を置かない」と伝えていたというのだ。日米安保条約6条に抵触するような発言である。オドロキ。安倍首相は、2島先行返還論に大きく方向転換したようだが、となると、

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