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29時間で身につく「にわか韓国語講座」(17)

第5章 文章を作る、話す、書く 3.副詞「~ヒ」「~ゲ」プラス動詞で生々しく

市川速水 朝日新聞編集委員

「新しい年に福をたくさん受けてください」

 ヨロブン、アンニョンハセヨ!

 明けましておめでとうございます。

 こんな時、韓国人はどう挨拶するのでしょうか。朝鮮半島にとっての新年は旧正月、今年の場合は2月5日前後ですが、もちろん西暦の正月にも挨拶を交わします。

 一般的なのは、새해 복 많이 받으세요.(セヘ・ボング・マニ・パドゥセヨ)

 直訳すれば、「新しい年(に)福をたくさん受けてください」。福だけが漢字語です。

 「セ」「ヘ」がそれぞれ固有語なのに加えて「福(ポク)」が「ボン(ボング)」と音変化するため慣れないと聞き取れませんが、毎年、元旦と旧正月ごとに口に出していればすぐに覚えてしまいます。

 というわけで、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

中国東北部・瀋陽の北朝鮮レストランで、従業員が韓国の流行歌「朝露」を熱唱していました=2002年撮影

今回は「副詞」です。ハマるとお得です!

 前回までに、助詞や形容詞、動詞を覚えました。主要な部品の最後は副詞(あるいは副詞的な修飾辞)です。今週は、ハマるとお得ですよ。マスターすればよどみが減って、文章を考える時のストレスが減ること請け合いです。

 さて、副詞というのはどんな作用をするのでしたっけ? まず、なくても一応、通じます。「大きい」という形容詞だけで、何となく大きい(小さくない)ことは分かります。そこに一言加わって話し手(発信者)の主観や客観的な「程度」が一気に彩りとしてイメージされるのです。

 「すごく」「すっごく」「マジに」「見たこともなく」「予想よりも」「イヤになるほど」…などなど。

 韓国語も、ほぼ日本語並みに質・量ともそろっていますので、全部覚えるのは並大抵ではありません。では、どこから手をつけていきましょうか?

 例えば、自分の「口癖」から入っていくのはいかがでしょうか? 国会で「まさに」「緊張感を持って」「しっかり」を連発する政治家もいますが。私の場合は、そうですね…。「ある意味では」とか「別な見方をすれば」とかをよく言ってしまいますね。

 これは正確には副詞ではなくて、接続詞的な文章であり、動詞にも直接つなげることもできる副詞的表現といえばいいのでしょうか…。副詞で言えば、知らず知らず「すごい」を連発しているかも。

 だとすれば、自分が言いやすい言葉、自然に出てくる言葉から覚えた方が手っ取り早いでしょう。
みなさんがどの言葉から入っていくかはおいおい考えていただくとして、代表的なものをいくつか並べてみましょう。品詞としての副詞に限らず、文章に彩りやにぎわいを与える、挟み込む文節と考えてください。これは例文が不要なものもあるでしょうが、注意が必要なものは例文を付けることにします。

代表的な副詞

・もっと 더(ト) 더 드세요.(ト ドゥセヨ)=もっと召し上がってください

・ちょっと 좀(チョム、ジョム) 좀 보여 주세요.(チョム ポヨジュセヨ)=ちょっと見せてください
 *この二つは(私を含む)あいまい表現好きの日本人向けだと思います。좀 더 주시겠습니까? で「もうちょっとくれませんか?」。飲み屋で最適。

・早く 빨리(パルリ)

・遅く 늦게(ヌッケ) 늦게 와서 죄송합니다.(ヌッケワソ チェソングハムニダ)=遅れて来てすみません
 *죄송は「罪悚」の漢字語読みです。罪を恐れるという意味ですね。

・むだに、やたらに、いたずらに 괜히(クェニ) 괜히 갔어요.(クェニ カッソヨ)=無駄に行きました
 *約束の時間に待ちぼうけを食わされた時や、映画館やレストランに満員で入れなかった時などに使います。

・簡単に 간단히(カヌダニ) *「簡単」の漢字語読みです

・突然  갑자기(カプチャギ)

・非常に 매우(メウ) 대단히(テダニ) 대단히 감사합니다.(テダニ カムサムニダ)=誠にありがとうございます

・すごく 굉장히(クェングジャングヒ)
     너무(ノム)  *よくも悪くも使います。「too much」的な。
     너무 좋다(ノム チョッタ)= 良すぎる
 *ネットで「可愛いすぎる」と褒めるような言葉づかいでしょうか。カラオケのかけ声でよく聞きます。「スゲエ」「ヤバイ」ですね。「너무해요」(ノムヘヨ)は「あんまりです」。話し相手に使われたらつらいですね。

・本当に、おそろしく 엄청(나게〉(オムチョング〈ナゲ〉) 엄청 화가 났어요.(オムチョング ファガナッソヨ)=すごく腹が立ちました *화가 나다 火が出る=怒るという慣用句です。

・ついに 드디어(トゥディオ) 드디어 백점을 받았다.(トゥディオ ペクチョムル パダッタ)=ついに100点とった
 *받다 は「受ける」ですが、試験などで評価される時にも使います。

・なんと 얼마나(オルマナ) 서울의 밤은 얼마나 활기찬지.(ソウレ バムヌ オルマナ ファルギチャヌジ)=ソウルの夜はなんと活気に満ちているのか *活気は漢字語

・別に   별로(ピョルロ) *ピョルは「別」の漢字語読みです 그 영화는 별로 재미가 없었어요.(ク ヨングファヌヌ ピョルロ チェミガ オプソッソヨ)=その映画(*漢字語)は別に面白くなかったです *チェミ=面白み。滋味から由来します。
 *日本語の「別に~」と同様に、「良かった?」「面白かった?」「おいしかった?」の返事として一言、「별로」と言えば、「たいして…」というつまらなそうな雰囲気を醸し出します。

少し長い慣用句や文脈を整えるためのお得な表現

・無我夢中で、気がせいて 정신없이(チョングシヌオプシ)
 *チョンシンは「精神」の漢字語読み。「精神がない」も慣用句です。최근에 너무 바빠서 정신없네.(チェグネ ノム パッパソ チョングシヌ オムネ)=最近、すごく忙しくて目が回りそうだ

・予想よりも 예상보다(イェサンポダ)
 *「予想」は漢字語です。「より」のポダが出て来ましたね。그 값이 예상보다 비쌌어요.(ク カプシ イェサングポダ ピッサッソヨ)=その値段は予想より高かったです

・ある意味では 어떤 의미에서는 *「意味」は漢字語

・簡単に言えば 관단하게 말하면 *「簡単」は漢字語

・逆に言えば 거꾸로 말하며

・振り返ってみれば 뒤돌아보면

・私の見方では 내가 보기에는
 *これらは、日本語とまったく同様、はさみたいところで言えばいいのです。いじわるな反応も日本語と一緒です。
 「逆に言えば」を連発する人には「逆、逆で元に戻ったじゃん!」。「簡単に言えば」が口癖の人には「最初から簡単に言えよ!」と心の中で叫ぶわけです。

 全体的に言えば、日本語と同様、形容詞が副詞に転じて使われ、「~히」「~이」「~게」が末尾に付いて副詞をつくる場合が多いのです。日本語で「多い」(形容詞)が「多く」(副詞)に変わり、たくさんの(形)→たくさん(副)、少しの(形)→少し(副)と少しずつ形が変わるのと同じ考えでいいと思います。

(~히) 굉장히 가만히(静かに)솔직히(率直に*漢字語読みです)
(~기) 갑자기
(~게) 크게(大きく) 작게(小さく) 예쁘게(きれいに)
ちょっと寄り道㉖ ネイティブ発音の難しさ
 日本語を母語にしているから外国人に日本語を教えられるか、と言えば、まったく違いますよね。「れる・られる」とか「受け身表現」とかについて、「どうしてですか?」と聞かれて「なんとなくそうなの!」とか答えても先生役はつとまりません。改めて日本語の文法を学ぶ必要があります。文法とはよく言ったもので、何げなく使っている文を法則にあてはめるものだからです。
 私が思い出す強烈な日本語体験を一つ。中国・天津に留学中、かなり日本語の上手な学生から聞かれました。「日本語の『高校』の発音が難しい。『こ・う・こ・う』と書くのに、なぜみんな『コーコー』というのか。さらに、1番目と3番目の『こ』は違うし、2番目と4番目の『う』も少し違う。詳しく教えてください」と。
 それって…。結局「習慣」とか、「そういうものなの」とか言ったのですが、全然答えになっていない返答で、相手はがっかりしたと思います。言われてみれば、文字づらと発音が合っていないし、どちらの「こ」に力点を置くか、音引きとも微妙に違う「コー」という響きは説明が難しいでしょう。これ、20年以上前の話ですが、今でもよく説明できません。きちんと説明できる人、教えてください。このように、どの国の言葉も、何年か暮らしてやっと微妙な発音をものにできるし、自然な言葉遣いになれば、さらに奥深い世界がある、ということですね。

簡単な文をつくってみましょう

 先々週からほぼ3回に分けて、言葉の部品・成分を一つ一つ覚えてきました。これで理論的には言葉を最初から最後まで言えることになります。

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