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29時間で身につく「にわか韓国語講座」(18)

第5章 文章を作る、話す、書く 4.友達言葉や伝聞で日本語調に

市川速水 朝日新聞編集委員

バラードの皇帝、シン・スンフンさん。澄み渡る歌声は、いつ聴いても胸にぐっときます(2005年、東京)

 ヨロブン、アンニョンハシムニカ!

 先週、かなり私も疲れました。途中から文法を終えて実践に入ったので、実質2回分やってしまいましたね。

 でも、苦労しているうちに骨格と筋肉の一部は、学び終えたことになります。これから先は、良い意味での「脂肪」だったり、「遊び」が中心になります。鋳型で形にした物を磨いたり研いだり作業なので、眉をひそめるのはやめて楽しんでいただきたいなと思います。これから先は、ほぼ全編、「ちょっと寄り道」のようなものです。

「そだね~」くだけた話法を覚えましょう!

 さて、会話文というのは基本的に「ですます調」で通じますが、日常的に、あるいは友達同士では、やわらかい言葉や言い回しが多いですよね。映画の会話もくだけています。このくだけた話法を「반말、パヌマル」(半マル=マルは固有語で「言葉」)。辞書によっては「ぞんざいな言葉」とありますが、慣れ親しんだ関係の人に言う言葉です。親が子どもにかける言葉もそうですね。

 ちょっと日本語と比較してみましょう。

 「가다=カダ、 行く」を例にとります。辞書に載っているのは「カダ」ですが、そのまま使うことはありません。たいていは「行きます」「行くよ」などに形を変えます。後者が「パンマル」です。子どもが「行く!」と言い張る時も「간다!」となります。

 「行きます」は「カムニダ=갑니다、またはカヨ=가요」、「行くよ」「行け」は「カ=가」となります。

 普通の文章は、末尾に「ヨ=요」をつければ普通の丁寧語になりますが、その「ヨ」を取って原形の語幹だけ残せばパンマルになるわけです。

 動詞の場合は、このように単純なのですが、このままでは、よほど親しい人か、けんか腰とも受け取られてしまいます。さらに「だよね」「だね」といったパンマル特有の語尾を付ければ、普通の友達言葉になります。

 「今日は暑いね」「暑いぞ」のパンマルはいくつか言い方がありますが、「오늘 덥네(オヌル トムネ)」のように原形の語幹に「~네」を付けるとそれっぽくなります。「더워」(暑い! トウォ)という表現もあります。これは「アルムダプタの法則」(覚えていますか?)で「ㅂ」が脱落して 「우」に変わる、さらにこの「더워요(暑いです)」から「요」を取ったものです。

 私が不思議に思うのは、「あなた」「君」「お前」を意味するパンマルが多いことです。

 以前お話したように、「あなた」には당신(タングシヌ)という言い方もありますが、主に演歌やラブソングの世界だけの言い方です。実際、恋人同士、親友同士だと「お前」「あんた」のようなニュアンスで「네(ネ)」「니(ニ)」 「너(ノ)」とどれも使います。니については、네の発音が方言でなまったもので、네と書いて니と読むなどという変わった解説もあります。

 恋人や友人同士で「자기」という表現もよく聞きます。「自己」の漢字語読みですね。日本語で、相手のことを「自分は…」というようなものでしょう。

 ちなみに、私はこれらの「パンマル2人称」については、カラオケで歌う以外は一度も使ったことがありません。使わなくても大丈夫です。でも知っておけばドラマの会話が分かります。あと、文章全体の語尾に야(ヤ)が付いて、「~だよ」と強い意志を醸し出す形もあります。

「冬ソナ」主演のペ・ヨンジュンさんはどこに行ってもファンにもみくちゃに(2008年、韓国・清州)
でも、冬ソナ通は、クォン・ヘヒョ(権海孝)さんが一番という人も。ペさんの同僚「キム次長」役で親しみやすいキャラが人気でした(2011年、ソウル)
ちょっと寄り道㉘ 私の教材だった「冬のソナタ」
 私の留学は2001年秋~02年春でした。その時の最大の自慢は、後に韓流ブームの先陣を切る「冬のソナタ」を韓国で最初に見た日本人の一人だったことです。しかも一生懸命、ほぼ全話を。
 というのは、マンツーマンで教えてもらっていた先生に「脚本が面白いし、韓国ドラマの特徴や男女関係がよく分かるから」と勧められたからです。初歩から学んで5カ月目、中途半端ながらだんだん上達し、しかも友達や恋人同士のくだけた「パンマル」はほとんど勉強したことがなかったので、ちょうど良い機会だと思ったのでしょう。ただ、要求が厳しくて「どこでもいいから5分間録音して繰り返し聴く。それをノートに再現して提出するように」という宿題を出されました。主にペ・ヨンジュンとチェ・ジウの会話を何度も、多い時には50回ぐらい反復して聴いたのですがなかなか聞き取れず、採点はいつも100点満点で5点とか15点とかでした。
 例えば日本人同士が「っていうか」「ふざけんじゃねえよ」とか「~みたいな」「じゃあね、バ~イ」と交わす言葉は数えきれません。パンマルにも、それ以外にも、助詞を抜くなど短縮された形もあります。電話をかけた時、「オレだけど」みたいな言葉も、この時に覚えました。
 その最愛かつトラウマでもある教材が、まさか1年後、2年後に日本の韓流ブームの中心になるとは想像もできませんでした。好きな歌でもドラマでも、一つを集中して覚えれば、何かが芋づる式に得られると実感したのも確かです。

次は「~だって」「だとさ」の伝聞・間接話法

 前半の「パンマル」に続くもう一つの“栄養素”は「伝聞・間接話法」です。

 韓国語を学ぶと、だいたい初級の後半か中級の最初に出てきますが、それほど重要で実生活で使うという意味なのでしょう。友達から聞いたことを第三者に伝える時、自分が言ったことを繰り返す時、噂など出所不明のことを口にする時…。様々な形で使われます。

 日本語から考えると、「~だそうです」「~だって」「だとさ(これは昔話風ですが)」という言い方、あるいは「~みたいだ」「~らしい」と、直接伝聞ではないけれどぼかして表現することもありますね。この2種類は韓国語でどう表現するのでしょう。

 ひとつ目は「~대」「~대요」を最後に付ければ「~だって(さ)」という表現になります。

例:어제 고향에 비가 많이 왔대요.(オジェ コヒャングエ ピガ マニ ワッデヨ)=きのう、故郷ですごく雨が降ったって。

 日本語と少し違う注意点が二つあります。まず、疑問形を間接話法にするときには「냐」(ニャ)と猫の鳴き声のような語尾になります。

例:친구가 이게 얼마냐고 물어 봤어요.(チヌグガ イゲ オルマニャゴ ムロバッソヨ)=友達が、これいくらかと聞きました。

 こんな体験があります。

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