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国民と自由、 優等生とキャラ立ちの握手の意義

選挙の季節を前に依然として勢いがでない野党陣営。立憲民主に期待されることは?

米山隆一 衆議院議員・弁護士・医学博士

国民民主党のWEB番組で、党首対談に臨んだ国民の玉木雄一郎代表(右)と自由党の小沢一郎代表=2019年1月25日、東京・永田町の国民民主党本部国民民主党のWEB番組で、党首対談に臨んだ国民の玉木雄一郎代表(右)と自由党の小沢一郎代表=2019年1月25日、東京・永田町の国民民主党本部

性格が違う二つの統一会派結成

 先月下旬、国民民主党(玉木雄一郎代表)と自由党(小沢一郎代表)が統一会派を組み、これに呼応して立憲民主党(枝野幸男代表)と社民党(又市征治党首)が参議院で統一会派を組みました。世間では、これを野党同士の潰しあいととらえる向きもあり、さして期待はされていないように見えます。

 もちろん二つの統一会派結成が、政局を一気に動かすというわけにはいかないでしょう。ですが、私はそれぞれの党の方々を知るものとして、多少なりとも期待するところがあります。

 まずもって、立憲民主党と社民党の統一会派結成そのものには、さしたる驚きはありません。この両党は「何より理念を大事にする」という姿勢で共通しており、かつ掲げている理念も近いからです。

 その一方で、国民民主党と自由党の統一会派の結成には、少なからぬ驚きを感じました。どうしてでしょうか?

優等生グループとキャラの立った人気者たち

参院本会議で代表質問に立つ自由党の山本太郎氏=2019年2月1日参院本会議で代表質問に立つ自由党の山本太郎氏=2019年2月1日
 国民民主党は、「支持率1%」と揶揄され、不人気にあえいではいるものの、クラスで言えば、いわゆる優等生タイプの常識人の集まりといってあまり間違いはないと思います(恐縮ながら代表の玉木さんがまさにその典型です)。これに対して自由党は、もちろん優秀ではありますが、たとえば山本太郎さんをみても森ゆうこさんをみても、「常識人」という範疇(はんちゅう)にとどまらないことは、おそらくご本人たちも自認しており、クラスで言うなら「キャラの立った人気者」という立ち位置だろうと思います。

 掲げている政策も、優等生で常識人の国民民主党は、よく言えば常識的、悪く言えば印象に残らない。かたやキャラの立った人気者の自由党は、良く言えばアピール力満点で面白いのですが、悪く言えば現実性に欠ける。ともにリベラルの範囲内にあるとはいえ、およそ対極にあります。

与党の批判に臆する必要なし

 野党のこうした動きに対し、保守的な論客からは早速、「理念なき野合」だとか、「野党同士の潰しあい」といった批判が出ています。確かに、立憲民主と国民民主の両党は立ち位置も理念も違いますし、野党同士の数合わせやつばぜり合いも事実としてあります。

 ですが、それは保守・自民党にしても同じこと。外国人労働者への対応を見ても、北方領土への対応を見ても、保守は保守で理念の違う同士が集まり、互いにつばぜり合いを演じています。野党の皆さんも、そのような批判に臆することはないと思います。

 とはいえ、野党同士の数合わせやつばぜり合いが、数合わせやつばぜり合いのまま終わってしまうと、相変わらず保守は一つ、リベラルはもろもろ沢山といった構図の中で、「保守対リベラル」という選択が示されないまま、保守の圧勝に終わってしまうのは必然です。

キャラが立った森さんの応援で当選できた私

森ゆうこ参院議員と並んで立候補表明する米山隆一氏(筆者)=2016年9月23日、県庁森ゆうこ参院議員と並んで立候補表明する米山隆一氏(筆者)=2016年9月23日、県庁
 ちなみになのですが、私が自分のことを語るのもなんですが、私自身は自民党から維新を経て民進党に入っており、人間のタイプとしては、実は国民民主党に近いと思っています(自分を優等生とか常識人とか言うつもりはないのですが、キャラの立った人気者では、まったくないと思いますので)。

 それが、キャラの立った人気者の森ゆうこさんの応援を得て、新潟知事選に当選したわけです(その後の顛末は、繰り返し本当に申しわけないと思います)。振り返ればこの選挙は、まさに選挙上手、アピール上手なキャラ立ちの人である森ゆうこさんが、私の常識人としての立場を尊重しつつ、見事に選挙を仕切り、それぞれの立ち位置が違うからこそ、それぞれの支持者から幅広く支持を得ることができた結果、当選できたのだと思います。

タイプの異なる人間がいてこそ支持が広がる

 政党にとって、理念の統一はもちろん重要なのですが、それにこだわると、どうしても同じタイプの人間ばかりが集まり、人材の幅が狭まってしまうのも事実です。現に野党は、先に述べた通り、優等生的常識人の国民民主党、キャラの立った人気者の自由党、強固な理念人の立憲民主党と、見事なまでに色分けがなされています。

 しかし残念ながら、それだけでは、私の知事選で見られたように(重ねてその後の顛末は非常に申し訳ないのですが)、理念が異なり、タイプの異なる人間同士がいてこその戦略の幅、支持の幅の広がりを持てないように思えてなりません。

 繰り返しますが、理念の統一は大事です。安易に足して二で割る的妥協をすると、理念はぼやけてしまいます。ですが、意外とそこは、「大きな旗印としての理念を共有したうえで、個別の政策レベルでは、それぞれの得意分野を生かすかたちで、分野ごとに譲り合う」(例えば「安全保障は国民民主党、原発政策は自由党」のように)という妥協はできるものです。

 そしてそれこそが、保守・自民党がやってきたことだと私は思います。

立憲民主党の強みは「結党の神話」

新党結成の会見後、「立憲民主党」と書かれたプレートを掲げる枝野幸男氏=2017年10月2日2日、東京都千代田区新党結成の会見後、「立憲民主党」と書かれたプレートを掲げる枝野幸男氏=2017年10月2日2日、東京都千代田区
 とすれば、まずはタイプの違う同士で握手をした国民民主党と自由党は、是非それぞれの利点を相互に行かせる形に、その握手を深めていただきたいと思います。

 そのうえで、やはりカギを握るのは、リベラル界で人気ナンバーワン、国民民主党の支持率1%の10倍以上の14%の支持率を得ている立憲民主党でしょう。

 立憲民主党の人気の秘密は、自他ともに認めるその明確な理念にあるのはもちろんですが、実のところ、その重要な部分の一つは、おそらく「結党の神話」ではないかと私は思います。

 国に「立国の神話」があるように、党にも「結党の神話」、ストーリーがあります。そして、実はそれは意外に重要なものです。残念なことに、

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