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「安倍新体制」に盛り上がりなし

“人気者”の小泉進次郎氏の初入閣も弾みにならず。はずされた石破氏はどうする?

田中秀征 元経企庁長官 福山大学客員教授

初閣議を終え、記念撮影をする第4次安倍再改造内閣の閣僚ら=2019年9月11日、首相官邸

 安倍晋三首相が「安定と挑戦」を掲げた第4次再改造内閣が9月11日、発足した。ただ、“人気者”の小泉進次郎氏が環境大臣として初入閣したにしては、意外なほど盛り上がりがない。

 新たな内閣の顔ぶれから受けた印象を言うと、古い柱をそのままにして、内装や備品を一変させたということだろう。留任した閣僚は2人、新任が15人、他に再任が2人と、かたちのうえでは大幅な刷新だが、「在庫一掃」と言われたり、新鮮味が乏しいと言われたりするのは、いったいどういうわけだろう。

4選への意欲は乏しい?安倍首相

 やはり、内閣の要である副総理と官房長官、自民党の柱である幹事長が、長期にわたって代わらないからであろう。

自民党新執行部の共同会見中、言葉を交わす二階俊博幹事長(右)と岸田文雄政調会長=2019年9月11日、東京・永田町の党本部
 私は、安倍首相が麻生太郎副総理兼財務大臣と菅義偉官房長官、二階俊博幹事長の3人すべてを留任させた場合は、首相に4選の意欲が乏しいと考えてきた。もし4選に強い意欲を持つのならば、リスクを覚悟で3本柱の1本か2本はかえるだろう。そうではなく、現状の安定を重視するばかりだと、4選への覚悟も意欲もないと見るほかない。

 なぜか? それは、安定からは政権に動きや勢いが生まれないからだ。3本の柱が今まで通りに機能し、自然に4選への流れができるとすれば、ありがたくその流れに乗ろうといった程度の意欲しか今の首相にはないと、私は受け止めている。

 特に、高齢の二階氏と麻生氏には、体調面での不安も残る。もちろん、両氏が共に体調を維持し、要職の激務に耐えることもあり得ようが、そんなことは何ら保証されてはいない。1本の柱でも機能の麻痺(まひ)を起こせば、そのまま安倍政権全体の機能麻痺を招く心配もあろう。

石破氏がおかした「政治的失敗」

 今回の人事には、安倍首相による「石破(茂)はずし」が露骨に透けてみえる。そのうえで、将来の首相候補と目される議員のほとんどを入閣させ、首相への忠誠を競わせている。

石破派(水月会)の会合であいさつする自民党の石破茂・元幹事長=2019年9月1日、神奈川県小田原市
 石破氏は、前々回の自民党総裁選での出馬見送りが、今なお響いているのだろう。かつての小泉純一郎氏のように、立候補を続けていれば、現在のような「はぐれガラス」にはならなかったのではないかと思えてならない。明らかな「政治的失敗」である。

 2001年に小泉氏が首相に就任した直後、私にこう言ったことがある。

 「この総裁選(2001年)に立候補しなければ、郵政民営化を諦めたとみられる。だから、泡沫(ほうまつ)と言われてもいいからと立候補した」

 この総裁選は小泉氏にとって3度目の挑戦であった。当落にかかわらず、政治家として筋を通した小泉氏の行動を、世論はかつてなく支援し、事前の予想を覆す驚異の逆転劇が生まれた。

 石破氏の過去の「政治的失敗」は取り返すのが難しい。だが、これからは自分よりも若い議員を応援し、“安倍政治”に対抗する流れをつくってほしい。そこに自らの政治的使命を見いだしてほしい。そう願っている。

進次郎氏には願ってもない環境大臣

 メディアは、総裁候補とされる菅、河野太郎、茂木敏充、加藤勝信の各氏、ならびに小泉進次郎氏の入閣に注目している。彼らに、党三役の政調会長に留任した岸田文雄政調会長を加えた6人のうち、岸田、菅氏はもとより、河野、茂木、加藤氏もまた、次期総裁候補として認知されたと言ってもいい。

記者会見する小泉進次郎環境相=2019年9月11日、首相官邸
 では、小泉進次郎氏はどうだろう。冒頭で述べたように、環境大臣就任でも盛り上がりが意外に少ないのは、彼の場合、入閣というよりも、一気に総裁選に出馬することを期待している人が少なくないからかもしれない。

 現在の進次郎氏にとっては、環境大臣は願ってもはない最高の役職だ。この際、地球環境問題に真剣に取り組み、温暖化問題に精通した政治家になってほしい。そして、原発問題や環境破壊といった課題に真正面から対応してほしい。

 政党や国の指導者になる人には、

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