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水没の宮城県丸森町をみて言葉を失う

[159]台風19号、千葉県鋸南町、宮城県丸森町……

金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

10月8日(火) 午前中「報道特集」の定例会議。原子力資料情報室にいらしたWさんと七つ森書館の中里英章さんのことについて電話でお話をする。

 あいちトリエンナーレの『表現の不自由展・その後』が午後から再開。抽選で30人ずつ2回のツアー方式。中止のまま開催が終了という最悪の事態だけは避けられた。河村たかし名古屋市長が、愛知県庁前でたった7分間の座り込み。陛下への侮辱が云々とかいうプラカードを掲げて、ライトウイングの方々と一緒に何やら喋っていたが、報道陣の数の方が多かったか。これが今の日本の「表現の自由」をめぐるひとつの現実の風景である。

愛知県庁の前に座り込み、抗議の声をあげる名古屋市の河村たかし市長=20191008「表現の不自由展・その後」の再開に抗議して、愛知県庁の前で座り込みをする名古屋市の河村たかし市長=2019年10月8日

 夕刻、韓国関係で意見交換の場。貿易、観光に加えて文化交流さえ政治の影響をもろに受けているという。超大型で非常に強い勢力の台風19号が日本に接近するというので、報道局の大部屋がざわざわしている。

10月9日(水) ストレス解消と体力回復のために朝早くプールに行き、ゆっくり泳ぐ。

 「毎日新聞」のコラム原稿。関西電力の金品受領について書く。その関電が今日午後3時から記者会見を開いて、八木誠会長以下の辞任を発表した。岩根茂樹社長は第三者委員会の報告後に辞任する。トカゲの頭切り。これで蓋を閉めさせてはならない。

 台風19号関連の取材で、あした急遽、君津市役所に取材に行くことに。

10月10日(木) 午前10時から局で某プロジェクトの関係でフランス人アナリスト、ジャン=イヴ・コラン氏にインタビュー。日本にいたこともある知日派で、とても面白かった。

 それからすぐに陸路、君津市へと向かう。台風19号襲来への備えで、前回の台風15号で甚大な被害を受けた千葉県南部を中心に取材をすることに。君津市役所に到着すると、すでに災害対策本部が立ち上がっていた。といっても専従は8人だ。ちょうど今回の台風19号に備えて2回目の全体会議が始まった。石井宏子市長が真ん中にいた。広報対応の職員は多少ピリピリしている。

「ヘルメットを被れ」と……

10月11日(金) 朝。千葉県の鋸南(きょなん)町へ。前回の台風15号で甚大な被害を被った場所だ。港を囲むようにして連なる町並みの屋根にはブルーシートがたくさん目につく。台風の備えに従事する人々を取材して回った。一応、土嚢(どのう)などで重しをしているが、これらのブルーシートは強風で飛ばされてしまうのではないか。なかにはペットがいるので、避難所には行かないという人もいた。過疎地でひっそりと暮らす高齢者たちにとって、ペットは家族同然である。そのペットを避難所に連れていけないとなれば、むしろ自分も一緒にそこに残るという選択肢をとるのだろう。

ブルーシートで覆われた屋根が目立つ岩井袋地区では、台風19号に備えて土嚢(どのう)を増やす人の姿があった=2019年10月8日午前10時31分、千葉県鋸南町、20191008土嚢(どのう)を増やして台風19号に備える=2019年10月8日、千葉県鋸南町岩井袋地区

 以前の取材で「何が内閣改造だよ」と怒っていたKさん夫妻のご自宅にもうかがった。やはり家の修復にはかなり時間がかかりそうだと言っていたが、お元気そうだった。車を走らせていると、老夫婦が引き戸に板を釘で打ち付けていた。かなりご高齢のご夫婦で、奥様が76歳、釘を打ち付けている旦那さんが83歳で認知症が少し入っているという。前回は避難所には行かなかったが、今回は早めに鋸南小学校の避難所に行くという。

 どうやら明日は鋸南町からの生中継となりそうだ。その後も継続取材となる場合を想定して、あしたの中継は同行ディレクターが交代する。それまでに中継箇所の諸交渉を続ける。

 鋸南町近辺では泊まる場所がないので、いったん東京の赤坂に戻り、局の近くのビジネスホテルで眠る。カメラマンが払底しているのか、明日の午前中だけ用のカメラマンが僕らと共に行くという。

10月12日(土) 「報道特集」のオンエア。早朝、再び千葉県の鋸南町へ。車中で「週刊現代」のコラムの原稿。風雨が徐々に強まってきた。

 台風15号の被害がきわめて甚大だった岩井袋地区を取材。屋根のブルーシートが激しく揺れ動いている。これでは暴風で飛ばされるのも時間の問題のように思える。以前から頼まれていた「KAWASAKIしんゆり映画祭」に出られない場合を想定して、手当てを考える。Oさんに連絡。

 午後になって鋸南小学校体育館の避難所に行くと、今回は早めの避難を考えてやって来た人たちがかなりいた。壁際から場所取りが始まる。この場所には、中国のCCTVやNYタイムズなども取材に来ていた。どんどん住民がやって来て、体育館だけでは足りなくなり、幼稚園の中にも避難所を増設していた。きのうお会いした老夫妻がちょうどいらっしゃった。生中継でお話をお聞きしたいと交渉した。

 かなり風が強くなってきた。といっても、一応屋根があるし、校庭のそばで何かが飛来してくる危険もない。ところがリハーサルをしていたら、東京から「危険だから避難所に少し入ったところに場所を変えろ」という。さらには

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