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新型肺炎で中国は変われるか?

李文亮医師の警告をデマと断じた中国。政治的思惑優先の対応を克服できるか

田中秀征 元経企庁長官 福山大学客員教授

2月10日から通常出勤となる北京市。春節を過ごした郷里から戻り、北京駅で降りた乗客の中には、ポリ袋を頭からすっぽりかぶって新型コロナウイルスへの感染防止を徹底する人もいた=2020年2月9日、北京市

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。死者数はすでに2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)を超えたが、依然、増加が続いている。

 SARSが流行した当時と現在との大きな違いは、中国と世界とのつながりの深化である。03年の中国の国力は現在よりも小さく、世界各国との経済的、社会的な関係や緊密の度合いも今ほどではなかった。

 それは、とりもなおさず、今回の新型コロナウイルスへの対応において、SARSへの対応が先例とはならないことを意味する。

 いま、中国当局に求められるのは、今回の事態に対する、徹底的に公正で誠実な対応に他ならない。国際社会の目はSARSの頃より格段に厳しい。不公正・不誠実な対応をとれば、必ずや真相があばかれるだろう。

罪深いテドロスWHO事務局長の言動

新型コロナウイルスについて緊急事態を宣言するWHOのテドロス・アダノム事務局長(中央)=2020年1月30日、ジュネーブ

 それを象徴的に示すのが、WHO(世界保健機関)のテドロス・アダノム事務局長に対する不信感の拡大だ。

 中国の強力な後押しによって事務局長に就任したといわれるテドロス氏の母国は、世界有数の“親中国”の国といわれるエチオピアである。

 彼は同国で保健大臣や外務大臣を歴任してきた政治家だ。それゆえ、政治的なスタンスとして、常に中国の側に立たなければ、自らの将来が危うくなるであろうことは容易に想像がつく。

 今回のWHOの動きは、誰がみても初動からおかしかった。

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