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中国に「戦狼外交」を仕掛けられた豪軍兵士の戦争犯罪から、日本が学ぶべきこと

木村和尊 軍事ライター

「隠蔽」から一転、「戦争犯罪」を認めたオーストラリア

 2020年11月30日、中国外務省報道官の趙立堅氏がTwitter上に、オーストラリア軍兵士がアフガニスタン人の子供の喉にナイフを突きつけているように見える偽の画像を投稿した。この投稿は中豪間の外交問題に発展し、オーストラリアのモリソン首相が中国に謝罪を要求する事態に陥っている。

 なぜ中国外務省報道官はそのような投稿をするに至ったのだろうか。背景には、オーストラリア軍兵士のアフガニスタンにおける戦争犯罪が存在する。

 11月19日、オーストラリア国防軍(ADF)は特殊部隊(オーストラリアSAS)の一部が、アフガニスタンにおいて不法に民間人や被抑留者(一般的には捕虜と表現されるが、国際法に照らすと厳密には異なる概念である)39名を殺害したとの報告書を公表した上で、同アンガス・キャンベル司令官はアフガニスタン国民に対し謝罪した。中国外務省報道官のツイートはそれを受けてのものであった。

 報告書が公表されるまで、アフガニスタンにおけるオーストラリアの戦争犯罪は軍事機密のベールに覆われていた。それどころか、オーストラリア当局はメディアによる戦争犯罪調査の妨害にまで動いていた。2019年6月、同国の戦争犯罪を調査していたオーストラリアの公共放送や新聞記者の自宅を、連邦警察が機密情報の漏洩等に関する捜査の為に家宅捜索したのである。

 それが一転しての報告書の公表であった。何故このタイミングとなったのかは定かではない。しかし、衝撃は大きい。オーストラリア軍兵士の振る舞いは、戦争に関する国際的なルールに公然と違反するものであったからだ。その後の報道では、殺害したタリバン兵の義足をジョッキ代わりにし、ビールを飲んでいた隊員が存在するとの事である。一部兵士らの「無法」を象徴するエピソードであろう。

中国外務省の趙立堅副報道局長=2020年2月27日中国外務省の趙立堅副報道局長=2020年2月27日

戦争にもルールがある

 「戦争にルールなどあるのか」とお考えの読者も多いだろうが、あるのが実態だ。それが国際人道法

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