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市民と行政のための「孔子廟」違憲判決の読み方

文化芸術支援、萎縮せず学びの機会に

志田陽子 武蔵野美術大学 造形学部教授(憲法、芸術関連法)

 また、学習講座や市民美術展への出展を楽しみにしている市民にしてみれば、そうした文化活動がある日突然に「憲法違反と判断されたため中止」となれば、福利を受けられないという不利益だけでなく、心の拠りどころを取り払われたような虚しさを感じることになるのではないだろうか。

 しかし政教分離は、公が守らなくてはならない憲法ルールである。公が一般市民に対して負っている責任を考えれば、ルール違反を宣告される前に、こうしたルールを理解共有しておく必要がある。

国や自治体はなぜ宗教と切り離さねばならないのか

最高裁判決を受けて記者会見する城間幹子・那覇市長=2021年2月24日、那覇市役所
 政教分離は、国や自治体は宗教と結びついてはならないとする憲法上の原則である。憲法の20条と89条に規定がある。20条は個人の「信教の自由」を保障した上で、この保障を確実にするために、国による宗教活動・宗教支援活動を禁止している。また89条は、このことを財政面から確実にしようとする規定で、国や自治体が公の財産を宗教団体に提供することを禁止している。

 この規定には二つの流れがある。

 一つは戦前の政府が国家神道を利用し、軍国主義を進めた反省である。ここでは国家と神社神道の切り離しが主な関心事だった。日本で政教分離というと、一般にはこちらの線が意識される。

 しかしより広い世界史のレベルの流れを見ることも必要である。200年以上も前、アメリカやフランスなどの欧米諸国が、宗教戦争や国内抗争の反省に基づいて、自らこの原則を採用してきたという流れである。

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