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いよいよ衆院解散・総選挙 注目選挙区から見える選挙戦の構図と焦点

岸田文雄政権が発足。直後の衆院選で問われるものは

星浩 政治ジャーナリスト

TimmyTimTim/shutterstock.com

 岸田文雄政権が発足した。菅義偉首相の退陣表明、自民党総裁選を経て首相指名、組閣とあわただしい船出である。そして、10月14日には衆院解散、19日公示、31日投開票の日程で政治決戦が繰り広げられる。

 自民党対立憲民主党という2大政党の対決を基本構図に、選挙戦は自民・公明ブロック対立民・共産ブロックという枠組みで争われる。9年近く続いた安倍晋三・菅政権をどう評価するか、新型コロナウイルス対策や経済や社会保障、外交などの政策をどう選択するか。くわえて新旧の世代交代も焦点となる。

 今回は3カ所の注目選挙区を紹介し、選挙戦の構図を俯瞰(ふかん)してみよう。

香川1区:7回目の対決となる全国屈指の激戦区

 まず、高松市を中心とした香川1区。自民党の平井卓也前デジタル担当相(63)に立憲民主が党の小川淳也氏(50)が挑む。両氏の対決は2003年、05年、09年、12年、14年、17年と続き、09年は小川氏が勝利、その他は平井氏が勝った。05年以降は、敗れた方が比例復活当選している。今回も全国屈指の激戦区になりそうだ。

「地方の名士」対「パーマ屋の息子」

会見する平井卓也デジタル改革相=2021年8月20日、東京都千代田区

 両氏の経歴は対照的だ。平井氏は祖父、父に続く3代目の国会議員。香川県内有数の資産家で、地元の新聞社やテレビ局の経営にも大きな影響力を持つ。全国各地にいる「地方の名士」の1人である。

 平井氏は伝統を誇る自民党の派閥・宏池会に所属。宏池会の会長である岸田氏の総裁選勝利にも貢献した。デジタル分野に詳しく、菅政権の目玉政策であるデジタル庁の発足に尽力したが、岸田内閣の発足で交代した。

 小川氏は自らを「パーマ屋の息子」と言う。高松近郊で美容院を営む家に生まれ、高松高校から東京大学を経て自治省(現総務省)に進んだ「地方の秀才」である。官僚の限界を感じ、「政治を変えたい」という思いから政界に転じた。

 選挙戦は同級生や労組員が中心の手作りだが、平井氏の組織選挙に押されてきた。永田町では、民主党政権下で総務省の政務官を務めた。安倍政権の時は、予算委員会などで安倍首相が主催した「桜を見る会」の公私混同ぶりなどを厳しく追及し、注目された。

「なぜ君は総理大臣になれないのか」がブームに

商店街で市民と言葉を交わす小川淳也氏=2021年6月22日、高松市丸亀町

 2020年には小川氏の政治活動を描いたドキュメンタリー映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」が静かなブームを呼び、選挙区でも人気を集めた。前回の総選挙(17年)では、共産党が候補者を出さずに小川氏を支援。今回も共産党の支援が継続する。

 平井、小川両氏とも、それぞれの党で政策づくりを進めてきた経験を持つ。両氏の対決は、自民、立憲民主両党の政策論争の最前線になるだろう。安倍・菅政権の評価も大きな対立軸になる。長年の政治家の系譜、地域の業界団体の支援といった典型的な自民党候補に、地元育ちで官僚を経験した若手が草の根選挙で挑むという構図だ。

 前回総選挙で小川氏は2183票差で惜敗。小川氏は今回、選挙区で勝利したら立憲民主党の代表選に立候補したいと表明しており、立憲民主党の次世代のリーダーが生まれるかどうかという点でも注目される。

千葉8区:二階俊博・岡田克也両氏の「代理対決」

 地域の有力者に若手が挑戦するという点では、千葉8区(柏市、我孫子市)も同じだ。自民党の現職・櫻田義孝元五輪相(71)に立憲民主党の新顔・本庄知史氏(46)が挑む。

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