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「中道」の日本維新の会と国民民主党が令和の政治で目指すもの~2022年展望

浅田均・日本維新の会参院議員×岸本周平・国民民主党衆院議員対談

吉田貴文 論座編集部

 今年(2021年)は歴代政権最長となった安倍晋三政権、この政権を引き継いだ菅義偉政権による「安倍・菅政治」が幕を下ろし、秋から岸田文雄政権がスタート。程なく行われた衆院選では自民党は議席を減らしながらも絶対安定多数を確保。公明党も議席を守り、自公の連立政権は維持されました。一方、野党第一党の立憲民主党はまさかの公示前議席割れとなり、立党以来代表をつとめてきた枝野幸男氏は辞任、泉健太氏が新しい代表になりました。

 そんななか注目されたのが、「中道」の立ち位置をとる日本維新の会と国民民主党が議席を伸ばしたことです。維新の会は公示前から4倍近く増やして41議席、国民も比例で予想以上の議席を得て11議席を獲得しました。二大政党による政権交代だけでなく、多様な政党による連立政権の可能性も、視界に入ってきた感じがします。

 「中道」の二党は2022年以降、何を目指すのか? 課題山積と言われる日本で、政策の実現にこだわる両党は、いかなる課題から着手しようと考えているのか。両党の中核メンバーであり、政策通としても知られる維新の浅田均参院議員、国民の岸本周平衆院議員のお二人に1時間半、本音で語っていただきました。(聞き手 論座編集部・吉田貴文)

対談する浅田均さん(右)と岸本周平さん=2021年12月13日、衆院第二議員会館

浅田均(あさだ・ひとし)
1950年大阪市生まれ。京都大学文学部卒業。日本放送協会職員、スタンフォード大学大学院修士課程修了、OECD日本政府代表部専門調査員。1999年から大阪府議5期。2010年に大阪維新の会を結党、11~14年に府議会議長。2016年に参院選大阪選挙区で当選。日本維新の会前政調会長。
岸本周平(きしもと・しゅうへい)
1956年和歌山市生まれ。東京大学法学部卒業。1980年大蔵省入省、プリンストン大学客員講師、経済産業省課長、財務省課長、トヨタ自動車(株)渉外部部長、経済産業大臣政務官、内閣府大臣政務官などを歴任。2009年より和歌山1区で小選挙区5期連続当選。国民民主党幹事長代行。

大きな変化を望まなかった国民と提案型野党への期待

――秋の衆院選で日本維新の会が公示前の11議席から41議席まで伸ばしたのには驚きました。大阪では言うに及ばす、比例でも着実に票を獲得しました。国民民主党も苦戦が予想されましたが、比例で想定以上の票を獲得し、公 示前の8議席から11議席まで増やした。この結果をどう見ていますか?

浅田均さん=2021年12月13日、衆院第二議員会館
浅田 先の衆院選について僕の見立てはこうです。今回のプレーヤーは与党Aと野党Bと提案型野党Cの三つ。AとBの対決では概ねAが勝ったけれど、野党が一本化できたところはBが勝った。AとCの対決では、大阪ではCが勝ち、その余波が大阪以外にも及び、善戦した。BとCの対立は地域差があり、勝ったところも負けたところもあった。

 55年体制的な二大政党制の意識が強く残っているところと、有権者の意識が進んでより多くの政党、AとBとCでどれを選択するかという意識が出てきているところ。別の言い方をすれば、2大政党制の枠組みが崩れて別のかたちに収斂していく過程にある地域と、全然そうではないところとの地域差が、全国的にあった気がします。

岸本周平さん=2021年12月13日、衆院第二議員会館
岸本 今回、自民は存外、議席を減らさず、野党第一党の立憲民主がむしろ減らした。ざっくり言えば、国民が大きな変化を望まなかったということだったと思います。だから、近畿では維新の風が強烈に吹きましたが、全国的には風はあまりなかった。

 そうなると、小選挙区では個々の候補者の地力がものを言います。事前の調査では必ずしも優勢ではなかった自民党が、投票日の夕方にかけて激戦を制していきました。個人後援会を持つ自民党の強さと、後援会が弱い立憲のひ弱さが、最後に勝負の帰趨を決めた。立憲が比例で伸びなかったのは、選挙直前に共産党との「閣外協力」という刺激的な言葉が踊り、有権者に警戒感を広がったのが大きかったと思います。

 一方で、浅田さんが指摘されたCに対するニーズが見えたのも事実です。今だから言えますが、うちの比例5議席は、選挙対策委員長だった私の目標よりかなり多い。提案型野党への期待があったのかなという感じはします。

浅田 維新が近畿で議席を増やせたのは、吉村洋文・大阪府知事と松井一郎・大阪市長らが、僕にいわせると、それまでに比べると“善政”を敷いて住民本位の行政が展開されているという評価が、選挙の追い風となって近畿の他の県にも影響したことが大きいと思っています。逆に言えば、強力な個人的地盤を持って当選したという人は少ない。個人後援会をはじめ、個人が選挙の地力をどこまでつけられるかが、今後のカギだと思います。

コロナ禍が選挙・政治に与えた影響

――夏まではコロナの感染者が増える一方で、菅政権への逆風は強く、自民支持層の間にも失望感が広がっていました。野党にすれば、自分たちに有利な風が吹くのではないかと思っても不思議じゃない状況でした。ところが、菅さんから岸田さんへの政権交代に合わせるかのように、ワクチンの効果もあってコロナ感染者が劇的に減り、野党への風は吹きませんでした。

岸本 コロナの感染者が激減し、コロナが争点にならなくなったのは、岸田首相には幸運でした。菅首相がもう少し粘っていたら、菅さんでも自民党は勝てたかもしれません。

浅田 菅首相が苦しい時期に毎日でも記者会見をやり、国民にアピールを続けていれば、情勢は大きく違っていたと思いますけどね。

――大阪では吉村知事が頻繁に会見をして、府のコロナ対策などを伝え、批判もありましたが、全体としては支持を得てきました。

浅田 コロナがなければ、知事や市長がここまで前面に出ることもなかったでしょう。緊急事態宣言の現場の責任者は知事ですから、そこでどう動くか、世論の評価の対象になる。さらに首相とも比べられる。知事や首長がいろいろ発言し、メディアで扱われる機会が増えたので、首長という存在の格が上がった面はあったと思います。

――二大政党だけでなく、首長や地方政党にも期待を寄せるという風に、有権者の意識が変わったのでしょうか。

浅田 手前味噌になりますが、維新は「大阪でこういう新しいことをやります」と公約したことを、実現してきました。例えば、中学校給食を、以前の大阪市長はやると公約してたけどできなかった。維新は行革を進め、財源を捻出して実現、さらに無償化するというところまでやった。選挙で1票入れるとここまで変わるという実感を、住民の方にもっていただいていた。その積み重ねが、国政選挙においても大阪で大勝するという結果につながったと思います。

政策が合致すれば政党の枠を超えた連携も

――提案型野党への期待を感じたということでしたが、今後の党の方針はどうなりますか。

岸本 衆院選後の役員会で決めたのは、今後、我が党は政策実現を最大の目標にしようということです。ただ、衆議院で11議席しかない現状からすると、政策実現のためには、どこかと組まなくてはいけない。法案を出す20人の賛同者が必要ですから。われわれは、自民であろうと維新であろうと立憲であろうと、政策が合致するのであれば、どことでも組む構えです。

 ただ、これまでのところ、維新とは政策が割と似ているので、一緒に法案を出させていただいた経験は多いです。予算案は50人以上の賛成がないと出せないですが、維新と協力すれば50議席を超えるので、これも可能になります。

 自民にも、古川元久国対委員長から自民党の高木毅国対委員長に連携を申し入れています。今のところ、断られていますが、方向が合えば、自民と法案を一緒に出すこともあると思います。立憲に対しても同様です。

岸本周平さん=2021年12月13日、衆院第二議員会館

浅田 立法事実について同じ認識があり、同じような立法ができるのなら、できるだけ国民と組んで、国政に提案をしていきたいと思います。今、痛感しているのは「数の力」です。衆院選前は予算委員会の質問時間がせいぜい30、40分でしたが、41議席のおかげで2時間38分になりました。これだけあると、維新の主張を予算委員会という場を通じて全国にアピールできる。少数野党であるがゆえになかなか取り上げられなかったことを、国政の課題にしていけると期待しています。

外交・安保、マクロ経済……「大きな政治」の議論を

――新型コロナ感染症への対応はもとより、日本は内政、外政ともに様々な課題が山積しています。どの課題にまずは取り組む考えですか。

岸本 国民としては、いわゆる「大きな政治」をやりたいですね。

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