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原発「割り切り」の論理にルソーの問いを

小林傳司

小林傳司 小林傳司(大阪大学コミュニケーションデザイン・センター教授)

 依然として余震が続き、東北地方の被災者たちの生活は苦境におかれたままである。福島の原子力発電所もいまだ十分に制御できていない(4月4日現在)。「想定外」という言葉がいたるところで聞かれる。今回の地震は、われわれに何を突きつけているのであろうか。

 近代の地震学を生み出したと言われるのは、1755年11月1日に起こったリスボン大地震である。リスボンを中心にイベリア半島全体を襲ったこの地震は、リスボン市街をほぼ完全に破壊し、火災そしてその後に大津波を引き起こした。死者は1万人とも4万人とも言われる。

 この地震の大惨事に衝撃を受けた啓蒙思想家のヴォルテールは、当時の流行の神学である「神の摂理」を強烈に批判する詩篇や作品を発表したのであった。作品として有名なのが『カンディード』である。

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