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「放射能」海洋放出にみる日本の外交下手

米本昌平

米本昌平 東京大学教養学部客員教授(科学史・科学論)

東日本大地震と大津波に襲われた東京電力福島第一原子力発電所は、核反応停止後の炉心冷却機能が失われ、チェルノブイリに次ぐ規模の原発事故を引き起こしてしまった。冷却のための注水が続けられているが、漏出経路が不明の高レベル放射性物質を含む汚染水が大量にたまってしまったため、低レベルの放射性汚染水1万トン余を海に放出した。原子炉等規制法第64条を根拠としている。

 これに対して韓国は懸念を表明し、隣国への通報などに問題があると指摘した。ロシア、中国も同様の懸念を示した。日本政府は国際法違反を否定した上で、関係国への事前の情報提供が不十分であったことを認めた。だが、日本政府のこの対応は、核廃棄物の海洋投棄に関するこれまでの国際的な経緯を踏まえたものとは思えず、外交の継続性や、今後の原発政策への広がりを考えると、少なくない問題をはらんでいる。

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