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重力波――日頃から準備して幸運を待つ

須藤靖

須藤靖 東京大学教授(宇宙物理学)

 いきなり「重力波」と言われても、そんな単語は初耳だという方がほとんどであろう。これは、アインシュタインの一般相対論によって予言される、空間の歪みが波として伝わる現象である。現在その初検出をめざした実験が世界中で進行しつつある。日本でも東京大学宇宙線研究所を中心としたグループが、昨年より本格的な重力波検出実験LCGT(大型低温重力波望遠鏡)プロジェクトに取りかかった(研究代表者は東京大学宇宙線研究所長、梶田隆章教授)。しかし「空間の歪み」などと言われてもピンと来ないのは当然なので、少しだけ具体的に説明してみよう。

 まず、日常的な「波」の例を考えてみる。池の表面はほとんど平らだが、ボートが通過するとその場所の水面の高さに乱れが生じる。そして、その乱れは波としてボートが通過していない他の場所にも伝わっていく。もしも水面に二つの落ち葉が浮かんでいれば、波が伝わるにつれてそれらの距離が時間とともに変化することが見えるはずだ。このような「波」のイメージが「重力波」に対してもほぼ当てはまる。

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