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iPS特許、生命を知財で覆う難しさ

尾関章

尾関章 科学ジャーナリスト

 理屈のうえでは、あらゆる臓器のもとになるiPS(人工多能性幹)細胞。そのつくり方にかかわる特許を、開発者の山中伸弥教授を擁する京都大学が日欧に続いて米国でも得た。知財競争では遅れをとることが多かった日本の科学研究も、最近はなかなかやるじゃないか、と思わせる成果ではある。

 だが、この特許は、抜け穴もいろいろありそうだ。生命現象にかかわる技術は、設計図に従って一から組み立てる機械とは違って、すっきりとは知的財産権で押さえにくいという事情がある。ただ、公的な大学が特許をもつということは、一つの企業が技術を囲い込むという事態を避けることにはなるだろう。その意味では、京大が特許をとったことよりも特許をとられずに済んだことを前向きにとらえるべきかもしれない。

 そもそも今回、米国で成立した特許は、きわどいたたかいの果実だった。このあたりの事情は、今月に出たばかりの『iPS細胞とはなにか』(朝日新聞大阪本社科学医療グループ著、講談社ブルーバックス)にくわしい。

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