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テクノ・マッチョの死角―ソフトを忘れるな

北野宏明 ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長

 理化学研究所のスーパーコンピュータ(以下スパコン)「京」が、LINPACKベンチマークで、10ペタフロップス毎秒の計算速度を達成し、現在のところスパコン世界ランキング1位となっている。

 これは言うなれば、レーシングカーの直線での最高速度とか、加速性能とかに対応する指標である。実際のプログラムでの計算速度は、これを下回る。

 「京」をはじめとする現在のスパコンは、単一の非常に速いプロセッサが計算しているわけではない。大規模並列計算機と言って、非常に多くのプロセッサが互いに通信して、演算の途中結果を受け渡しながら計算していく方式である。

 一般に、計算過程でプロセッサ間の通信が少ないほうが実行計算速度は大きくなり、通信が多くなるとデータの受け渡しやプロセッサの待ち時間が発生して、計算速度は落ちる傾向にある。また、プログラムの中には、多くのプロセッサを活用しにくい、つまり、一つか数個のプロセッサにしか計算を割り当てられないようなものもあり、これらを高速演算するのはきわめて困難である。つまり、スパコンの能力を発揮させるには、ソフトウエアの出来が勝負どころとなる。

 「京」は、現在2位の中国のマシンとは、4倍の性能差である。しかし、アプリケーションソフトウエアの出来次第では、4倍程度の違いはすぐに出てくる。

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