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「国内総計算能力」を考えてはどうか

北野宏明

北野宏明 ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長

 最近、あらゆるものがAmazonで買えるようになっているのだが、ついにスパコンも買えるようになった。といっても、スパコンを宅配されても困る。これはAmazon Web Service (AWS)の一部であるAmazon Elastic Computing Cloud (EC2)のことである(http://aws.amazon.com/jp/hpc-applications/ http://www.ploscompbiol.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pcbi.1002147)。これは、オンラインで、Amazonの計算クラスタの計算時間やデータストレージを買うことができるサービスで、使っただけ課金されるサービスである。高性能計算(HPC)のオプションでは、17024プロセッサーを使いピーク性能で350テラフロップスを達成し、2011年11月のスパコンランキングで42位となっている。

 これは、「京」の10ペタフロップスには、遠く及ばない。しかし、ペタフロップス・オーダーの計算量を必要とするユーザは、ごく一部であり、ほとんどのユーザの需要は、AWSでまかなうことが可能であろう。ここで、AWSがあるから「京」が不要であると言っているわけではない。10ペタフロップス毎秒の計算を集中的に行い、重要な問題を解く応用は存在するであろう。しかし、同時に多くの潜在ユーザは、一定の計算量が確保されれば、使いやすさやコストが重要なファクターとなるということも認識しておく必要がある。

 大きな計算機をつくり、計算量を提供する目的は、科学的、社会的に重要な問題を解きたいからである。その問題は多様であり、解き方も多様性があるであろう。極めて高性能なスパコンが必要なこともあるし、AWSが最適な場合もある。

 さらに、大きな計算量が必要と思われていた問題を、全く別の解き方をした例もある。

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