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続・変わる高齢者医療-日本老年医学会「立場表明」を読み解く

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

「立場―1」の「年齢による差別(エイジズム)に反対する」は、「いかなる要介護状態や認知症であっても、『最善の医療およびケア』を受ける権利がある」と続けた。興味深いのは、「したがって」、胃ろうを含む経管栄養などは「慎重に検討されるべきである」としたことである。

 従来の医療や介護の現場は、長生きが最善だった。だから、栄養がとれなくなれば躊躇なく人工栄養に切り替えた。それこそが倫理的な対応であるという建前があったからだ。だが、2012年版は、長生きが最善とは限らないと打ち出した。

 そして、「何らかの治療が、患者本人の尊厳を損なったり苦痛を増大させたりする可能性があるときには、治療の差し控えや治療からの撤退も選択肢として考慮する必要がある」と踏み込んだ。「差し控え」「撤退」という、これまではタブー視されてきた行為を前向きに取り上げたのである。朝日新聞は、この文言から「胃ろう、中止も選択肢」という見出しを取った。 

 「立場―2」から「立場―4」は、

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