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上関原発 自然保護が突きつける「NO」

米山正寛 ナチュラリスト

 瀬戸内海の西部、山口県上関(かみのせき)町長島に、中国電力(本社・広島市)が上関原子力発電所の建設を計画している。原発建設をめぐっては当然、その安全性が争点となるが、ここはそれだけではない。立地点は豊かな自然環境を残す場所であり、貴重な瀬戸内海の原風景を守ろうという声がわき上がっている。そうした動きを生み出し、全国へ発信してきた自然保護団体「長島の自然を守る会」に日本自然保護協会(田畑貞寿理事長)の第11回「沼田眞賞」が贈られた。尾瀬を守るための運動から生まれて約60年の歴史をもつ同協会が後押しをした形で、改めて上関原発計画へ「NO」の声が突きつけられた。
上関原発建設予定地(手前)と向こうに浮かぶ祝島

 周防灘に浮かぶ長島の田ノ浦の海岸で約14haの海を埋め立て、改良型沸騰水型炉(電気出力137万3000KW)2基を建設するのが上関原発計画だ。1982年に計画が浮上して以来、30年にわたって、建設の賛否をめぐる議論が続いてきた。とくに原発建設予定地から約3.5km離れた対岸の祝島では、島の住民約500人の大半が反対の意思を表示しており、島内での反原発デモは1100回を超える。事故が起これば放射能を遮るものがないことへの不安や、埋め立てによって貴重な漁場が失われたり海を臨む景観が損なわれたりすることへの抵抗感が、長年の反対を支えてきた。

 守る会が8人の有志によって結成されたのは1999年のこと。環境影響評価法(環境アセス法)が6月に施行される直前の4月に、中国電力が旧アセスによる調査書を提出したのが、きっかけだった。近くにいるはずのハヤブサやスナメリが載っていないといった疑問から始まって、専門の研究者を交えた調査を市民の立場で進めた。そして訪ねてきた研究者から「世界的に珍しい生きものが多くすむ」「瀬戸内海に残った生物多様性のホットスポット」といった評価を聞いた。

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