湯之上隆
2012年04月05日
一体何があったのか?
レジャーダイビングと同じ12~14リットル圧縮空気タンクを使って、57mの深度で作業をすることの安全面からの是非については論じない。レジャーダイビングでは30mを限界と定めているが、職業潜水士にそのような規則は無いし、作業潜水の常識についても私は知らないからだ(とは言っても、ナイトロックスも使わずこんな深度まで潜るなんて無謀だという思いはある。ナイトロックスとは、通常空気よりも酸素濃度を高めた酸素と窒素の混合ガスのことである)。
死亡した3人のタンクの空気残圧はゼロだったという。また司法解剖の結果、水面に浮上してきた作業役の二人は水死、海中から発見された連絡役は急性窒息が死因だったという。
「ダイビング歴100回程度のレジャーダイバー3人が、タンクの残圧確認を怠って同時に死亡」と聞いたらあり得るだろうなと思う。しかし、「インストラクターが残圧確認を怠って3人同時に死亡」と聞いたら、即座にありえないと答える。インストラクターのレベルになると、タンク容量と初期圧力から、どのくらいの深度にどのくらいの時間潜れるということが皮膚感覚でわかるからだ(最近、低レベルのインストラクターが増えているという話もあるがここでは触れない)。いわんや、30年のキャリアがある職業潜水士3人が、タンク残圧の確認を怠って死亡ということはあり得ない。
また、3人のうち2人はこの深度の作業経験が豊富だが、1人は初めてだったために窒素酔いを起こし、それがトラブルを誘発したという見解がある。
窒素酔いとは、30m以深に潜水して高気圧窒素を吸った時に起きる一種の中毒症状のことである。窒素酔いになるかどうかは個人差があり症状も様々である。本当に酒に酔ったような状態になる人もいれば、突然笑い出す人もいるという。私は比較的窒素酔いになりやすく、その症状は極度に視界が狭まり現実感が無くなるというものだ。「あー、窒素酔いだ」と自覚できるので、5mほど水深を上げると嘘のように症状は消える。
しかし、たとえ1人が窒素酔いになったとしても、3人全員が死亡するのは理解できない。窮地に陥った1人を助けようとしてトラブルになったとしても、このレベルの潜水士が3人とも死んでしまう状況は想像し難い。
私の推理は、
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