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絵空事の「大震法」を早く廃止せよ

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

大規模地震対策特別措置法(大震法)は、1978年にできた。東海地震が迫っていて、そして、うまくすれば直前予知ができると研究者たちが主張したからだった。95年に阪神大震災が起きた。そして、2011年に東日本大震災が起きた。大震法の前提は間違っていた。それなのに、いまだにこの間違った前提に基づく法律に効力がある。今となっては百害あって一利なし、役立たずの大震法は早く廃止すべきだ。

 大震法の間違いは二つ。東海地震だけに注目したことと、直前予知ができると前提したことだ。

 第三条は、「内閣総理大臣は、大規模な地震が発生するおそれが特に大きいと認められる地殻内において大規模な地震が発生した場合に著しい地震災害が生ずるおそれがあるため、地震防災に関する対策を強化する必要がある地域を地震防災対策強化地域(以下「強化地域」という。)として指定する」とある。日本語としての悪文ぶりは目を覆うばかりだが、とにかく大規模地震発生のおそれがとくに大きいところを対策強化地域に指定する、という話だ。指定されたのは、静岡県全域と神奈川、山梨、長野、岐阜、愛知、三重県の一部。そこだけ、国費を投じて観測体制を強化し、防災対策も強化した。

 今となってみれば、何と見当違いの地域の防災対策を強化してきたのか、と思う。当時は、この地域なら観測体制の強化で直前予知ができるだろう、という希望的観測があった。だが、阪神大震災も東日本大震災も予知のヨの字もできなかった事実をみれば、東海地震だけは予知できるとどうして思えようか。

 大震法第9条は、「内閣総理大臣は、気象庁長官から地震予知情報の報告を受けた場合において、地震防災応急対策を実施する緊急の必要があると認めるときは、閣議にかけて、地震災害に関する警戒宣言を発する」と定めている。地震予知ができたら、警戒宣言を出しますよ、ということだ。

 その後の条文は、警戒宣言に伴う取り決めが延々と続く。ただちに国民に知らせる。政府には総理大臣を本部長とする地震災害警戒本部を作り、都道府県や市町村でも知事や市町村長を本部長とする警戒本部を作る、等々。強化地域内の住民は、警戒宣言が出たら「火気の使用、自動車の運行、危険な作業等の自主的制限、消火の準備その他当該地震に係る地震災害の発生の防止又は軽減を図るため必要な措置」(第22条)をとらないといけないんだそうだ。警戒宣言のあとに確実に地震が起こるかどうかはわからないというのに。

 阪神大震災が起きた後、

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