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イモムシウオッチングのすすめ〈写真なし版〉

米山正寛 ナチュラリスト

 世の中はなぜかイモムシブームらしい。

 イモムシとは、ふつう蝶や蛾の仲間(昆虫の鱗翅目)の幼虫を指す言葉で、日本には約6000種もいる(同じような体形のハチやハエなどの幼虫も加えたら、もっと増える)。これだけいるのに、多くの人が知っているのは限られる。誰でもわかると言えそうなのは、おそらくアゲハチョウ(ナミアゲハ)とモンシロチョウ、そしてカイコの幼虫くらいだろうか(これらだって、あやしい人はいるのかもしれない)。

 飛んでくる成虫の蝶や蛾は目にする機会があっても、幼虫のイモムシとなるとなかなかお目にかかれない。しかも、大きさや色や形は、種類によって、あるいは同じ種の中でも、さまざまな変化に富む。だからこそ、そこが「面白い」「魅力的」さらには「かわいい」とまで言う人がいる(イモムシ好きの人は、「写真付き版」をご覧下さい)。

 もっともブームと言っても、きっちりしたデータがあるわけではなさそうだ。ただ、たくさんのイモムシをカラー写真で紹介した『イモムシハンドブック』(安田守著、文一総合出版発行)というガイドブックが2010年に出てから、自然観察の仲間が何人ももっているのを目にしてきた。そうしたら、なんと今春、続編にあたる『イモムシハンドブック2』が出版された。1冊目の226種に加えて、さらに239種を紹介してある。編集部によると、代表的なものや身近で観察可能なものはほぼ網羅したことになるという。

 写真は、ほとんどすべて飼育したものを撮影したそうで、生き生きとしたポーズをするまで根気よく待ったというだけに、なかなか決まっている。あるところで見た宣伝文句は「大ヒット販売中」「どよめきがとまりません」と、図鑑類としては大胆なアピールだった。これでまだ国内の種数の1割に満たないわけだから。これからどうなるのか。昨年には『庭のイモムシ ケムシ』(川上洋一文・構成、東京堂出版発行)という、やはり写真を多用した本も出されており、潜在的な需要はけっこうあったのだろう。

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