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ロボットはW杯を制覇できるか?〈中〉

越境する研究者をめざして

北野宏明 ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長

 RoboCupは、サッカーを一つのメインストーリーとしているが、教育を目的としたRoboCupJuniorや、災害救助をテーマとしたRoboCupRescueなどのプロジェクトがある。今回は、最近注目されている、レスキューロボットに関係のあるRoboCupRescueの展開を紹介させていただきたい。

 RoboCupRescueは、RoboCupの目標がサッカーであり、しかもその達成時期を2050年とかなり先に設定しているため、より早い段階で世の中に還元できる取り組みも必要であるとの認識から始まっている。

RoboCupRescueの風景。車内に人が残されているのか――ロボットのみがフィールドに入り、操縦者は見えない場所から、ロボットに備え付けられたセンサーやカメラの情報だけで被災者を探す=筆者撮影

 災害救助という目的に最適化するため、サッカーロボットと違い、完全自律である必要はない。実際には、操縦者が遠隔操作できるうえに、ある程度の自律制御で探索効率を上げる方式が実際的である。ただし、直接ロボットの見えるところから操作することはできない。なぜなら、災害現場では、ロボットからかなり離れた場所から操縦することが想定されるからである。

 これは、阪神・淡路大震災当時、神戸大学に所属していて自らも被災され、今回も東北で再度被災された東北大学の田所諭教授が中心になって立ち上げた。

 この背景には、阪神・淡路大震災でロボット工学が無力だったという反省から日本のロボット関係者の間に起こったいろいろな議論があり、計画は急速に動き出した。2001年8月にシアトルで第1回の大会を開いたのだが、その1カ月後、「9・11」を迎えることになった。

 米国から参加していた南フロリダ大学のチームは、大会後、彼らのロボットを遠征用にパッキングしたまま休暇に入り、新学期を迎えるところだったが、テロ発生の知らせに、このロボットを車に積んでニューヨークの現場に入った。

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