2012年07月19日
高等学校の普通教科に「情報」があるのをご存じだろうか。 すべての国民を対象とした情報教育の拡充が必要であるという認識の下、高等学校における必履修教科として普通教科「情報」が2003年度に導入された。それ以来10年が経過しようとしているが、種々の問題が顕在化している。
一つには、教科「情報」の授業レベルの問題である。良い教育を行うためには、その科目に造詣の深い教員が必要であることは言うまでもない。ところが、高等学校において教壇に立つために必要な「情報」の免許が、15日間の研修で得ることができた時期があった。まるで、自動車普通免許の取得が2週間の合宿で可能というようなものである。自動車普通免許の取得には運転の仕方を習得していることは必須であるが、車の内部構造や動作原理に関しての知識は必要ない。だから、2週間の合宿でも免許が取れる。15日間の「情報」の研修も同様で、原理を理解することなくパソコンやWordやExcelなどの操作方法を習得することになる。結果として、教科「情報」の授業は、肝心な情報システムの仕組みなど情報の本質的な要素を教えることはなく、パソコンの実習やWordやExcelなどの操作方法のみを教える傾向になってしまう。このことは、たとえば数学で「数の計算方法の原理は習得させないで、電卓の操作を教える」ことに相当する。こうした数学教育に賛同する人はいないであろう。
ネット社会を安全にそして楽しく生き抜いていくためには、情報システムの仕組みを理解しておくことが肝要である。たとえば、インターネットの仕組みやセキュリティーの基本メカニズムを学ぶことではじめて危険がいっぱいのネット社会で自分自身を守ることが可能となる。教科「情報」教育に於いては、まず授業内容のレベルアップを図ることが急務である。大学や大学院で情報を深く学んだ学生が、教科「情報」プロパーの教員になれる道を広くすることが必要である。
もう一つの問題が、
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