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クラウドサービスの落とし穴と利用者の心構え

本位田真一

本位田真一 本位田真一(国立情報学研究所副所長/計算機科学)

ここのところクラウドサービスについての障害がいくつか続いて起きている。念のために申し上げると、インターネットで提供されるさまざまなサービスのことを「クラウドサービス」と呼ぶ。要は、どこかにあるコンピューターを共有して得られるサービスのことだ。

 大阪市の水族館「海遊館」や小林製薬の製品情報サイトなど多数のWebサイトがダウンし、サイト上にアップロードされたデータやメールデータが消失する「事件」が起きたのは6月下旬だ。影響した顧客数は約5000に上るという。報道によると、そのサービスを提供している事業者は「データ復旧を行うことは不可能と判断した」と発表した。

「弊社ならびに外部専門業者を交え、データ復旧を試み続けて参りました。しかしながら、極めて遺憾ではございますが、データ復旧を行うことは不可能と判断いたしました」というのである。あとは利用者自ら持っているバックアップデータで対応してほしいとのこと。つまり自らバックアップしていない利用者については、「データの復旧は諦めてください」と宣告したことになる。

 改めてサービス約款を見てみると、「本サービスが本質的に情報の喪失、改変、破壊などの危険が内在するインターネット通信網を介したサービスであることを理解した上で、利用者自らの責任でデータバックアップを行うものとし、利用者がバックアップしなかったことによる損害について責任を負わない」としている。バックアップをするのは利用者側の自己責任というわけだ。データ喪失の実際の原因は「メンテナンス作業において用いる特定の管理プログラムの不具合」ということだった。

 データの紛失については、この事例のように明るみに出るため、その深刻さはまだ小さいと言える。むしろ、より深刻なのは

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