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70年前に予測されたインターネット社会の爆発的発展

伊藤智義 千葉大学大学院工学研究院教授

インターネットの窓口の役割を果たすポータルサイト。その大手企業である米国ヤフー社の最高経営責任者(CEO)に、同分野でシェア1位に成長した米国グーグル社の元副社長マリッサ・メイヤーが就任した。グーグルの20番目の社員で女性技術者、しかも37歳という若さ。話題性には事欠かないニュースだ。

 1994年、スタンフォード大学の2人の大学院生がネットサーフィンにはまり、便利なように各サイトを分野別に階層構造にした「WWWガイド」を作った。これに多数のユーザーがつき、起業したのがヤフーである。2年後には週当たり1億件のアクセス数を記録する一大ベンチャー企業に成長し、インターネット検索エンジンのパイオニアとしての地位を確立した。

 ヤフーの検索エンジンは人手で行われていたため(ディレクトリ型検索エンジンと呼ばれる)、情報の質の高さに特長があったが、インターネットの爆発的な普及に対応できなくなり、2000年にグーグルのロボット型検索エンジン(キーワード等の組み合わせで自動的に検索するシステム)を取り入れた。

 グーグルは、こちらもスタンフォード大学の2人の大学院生が1998年に創業し、検索エンジンがヤフーに採用されたことによって急成長した。その後は、斬新なアイデアを次々に実現して、現在ではもっとも影響力のある企業の一つになっている。

 渦中のメイヤーもまた、スタンフォード大学出身だ。37歳と聞くと驚くほどの若さであるが、創業者の年齢が、ヤフーでは40代半ばであり、グーグルの方は2人とも1973年生まれなので、まだ30代(今年で39歳)であることを考えると、それほどおかしな話でもない。

 ただ残念ながら、私はメイヤーという人物についてほとんど知らず、今回の人事について言及する立場にない。そこで本稿では、両社も一翼を担っている現在のインターネット社会の原点を紹介しておきたい。そこには、科学技術が持つ、驚くべき先見性があった。

 それは、1945年7月にアメリカの科学者ヴァネヴァー・ブッシュ(1890-1974)が発表した「As We May Think(思考のおもむくままに)」という一編の論文である。コンピューターが誕生するかしないかという時期であり、今からおよそ70年も昔のことである。

「From Memex to Hypertext」より

 ブッシュは、机ほどの大きさの機械に情報を自由にしまっておき、必要に応じて出し入れできる「個人図書館兼秘書」のような装置を構想した。今日のパソコンと驚くほど似た機能を有している。ブッシュは、その装置を

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