メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

自然エネルギー「光合成」解明を救った資金

米山正寛 ナチュラリスト

 光合成の鍵となる反応を触媒する「光化学系II(PSII)複合体」の構造が日本で解明されたことを、以前にこのWEBRONZAで書いた(2012年7月21日付)。その成果を上げた神谷信夫・大阪市立大学教授(構造生物化学)と沈建仁・岡山大学教授(植物生理学)が2012年度の朝日賞に選ばれ、贈呈式でご両人に再び会うことができた。研究内容の詳細は前報を参照いただくとして、二人の受賞挨拶を聞いていて改めて感じたのは、この研究の危機を救った資金提供の重さだった。
朝日賞の贈呈式会場に並んだ神谷信夫さん(左)と沈建仁さん=1月31日、東京・日比谷の帝国ホテルで関口聡撮影

 PSII複合体の良質な結晶づくりを手掛けた沈さんは、「20年かかったが、ついに私たちは世界一の結晶をつくりました。途中で世界一になったときは1年もたたずに欧州のグループに抜かれましたが、最終的に一番良い結晶をつくりだすことができました」と語った。結晶の構造解析を受けもった神谷さんは、巳年生まれの自分自身を「気が長い」として、「この研究は20年以上前に始めたものです。長いことやっていても、研究は思うようにいかないことのほうが多いが、今回のように急にステップが上がるときもあります」と、大きなブレークスルーを経ての成果だったことを強調した。

 この複合体がかかわる光合成での水分解の全容解明には、パラパラ漫画のように反応ステップを次々と追いかけて、変化を突きとめていく必要がある。そのために沈さんたちは、今後も次のステップを明らかにする基礎研究を推し進めていくという。また神谷さんたちは未来のエネルギー源としての人工光合成実現に向けて、2030年を目標にした産学連携のロードマップを描いて走り出した。20年の歳月をかけて一つの成果を導いた二人の目は、さらに20年以上先を見据えているわけだ。

・・・ログインして読む
(残り:約2044文字/本文:約2766文字)