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「すばる」から「アルマ」へ~日本の天文学における国際化の深化

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

日米欧の三極が協力して南米・チリのアタカマ砂漠に建設してきたアルマ天文台(Atacama Large Millimeter/submillimeter Array=アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)の記事を5月7日~10日まで朝日新聞夕刊で連載した。これまで見ることができなかった波長帯の電波も受ける、世界最高性能の電波望遠鏡だ。人類を未体験ゾーンに導くと期待されている。ここでは国際化という視点から、日本の天文学におけるアルマ天文台の意義を考えてみたい。

 3月に開かれた完成記念式典では、日本がきっちり3分の1の存在感を見せたのが印象的だった。世界一乾燥しているといわれるアタカマ砂漠の標高5000メートルの山頂部に66台のパラボラアンテナを配置し、標高2900メートルの山麓施設からコントロールするのがアルマ天文台だ。式典は、山麓施設の脇に大きなテントを張って催された。

アルマ完成記念式典で最近の成果を説明する川辺良平・国立天文台教授

 開会宣言、タイス・ドゥフラウ合同アルマ観測所長の歓迎の挨拶につづき、合同アルマ観測所のチーフサイエンティストとして国立天文台の川辺良平教授が最近の科学成果を解説。米国国立科学財団のスブラ・スレシュ長官、日本の福井照・文部科学副大臣、欧州南天天文台のティム・ドゥズー台長が順に祝辞を述べ、最後にチリのピニェラ大統領が登壇。スペイン語と英語で演説し、大統領が「観測開始」を宣言すると山頂のパラボラが一斉に動き出す様子がスクリーンに映し出された。パラボラは音楽に合わせて首を振り、まるで踊りをおどっているよう。感動的な式典だった。

 福井副大臣が祝辞で強調したのは、日本がいち早くこの天文台の建設を構想したという点だった。チリの現地調査に国立天文台教授の石黒正人さんが最初に入ったのは1992年。すばる望遠鏡建設の予算がついた翌年だ。

 天体望遠鏡というと、

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