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フィンランドは「原発推進の旗手」ではなかった

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

 フィンランドは、福島事故後にヨーロッパで最初に「それでも新たに原発をつくる」と宣言した国である。使用済み燃料の最終処分場の建設で、世界の先頭を走る国でもある。「原発推進の旗手」というイメージのその国を初めて訪れて、強い印象を受けたことが二つある。使用済み燃料の再処理はしないと、とっくに決めていること。そして、使用済み燃料は輸出も輸入もしないとまず決めて、そこから国内での最終処分場探しを始めて場所決定に至っていることだ。関係者の話を聞くと、「推進」でも「脱」でもない、現実主義者の像が浮かび上がってきた。

オルキルオト原子力発電所。

 フィンランドは原発大国ではない。稼働している原発はわずか4基だ。103基の米国、58基のフランス、そして50基の日本、33基のロシアと比べれば小国に過ぎない。

 日本では1960年代後半に米国の原発を輸入し、70年代に続々と発電を始めた。フィンランドはほぼ10年遅れと言っていい。ロシアから輸入した加圧水型がロビーサ原子力発電所で77年、81年から、スウェーデンから輸入した沸騰水型がオルキルオト原子力発電所で79年、82年からそれぞれ送電を始めた。発電量に占める原子力の割合は26%、これは福島原発事故以前の日本と同じくらいだ。

 そして、フランスとドイツの会社に発注した5基目をオルキルオトに建設中で、2010年7月に国会が承認したさらなる新設方針を福島原発事故後も変えず、そちらの業者選定作業も進んでいる。つまり、福島原発事故が起きても、原発を減らす選択はしていない。とはいえ、事故を無視したわけではなく、福島を教訓に津波対策など安全対策の強化を進めている。

 特筆すべきは

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