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地球温暖化懐疑派としてIPCC第5次報告書に物申す(後編)

山内正敏 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

 世界の気温を二酸化炭素による温室効果と結びつける考え方は100年以上も昔からある。例えば19世紀末にアルヘニウス(1903年ノーベル化学賞)が温室効果を数式化しており、岩波文庫『中谷宇吉郎の紀行集』(初出1957年11月)では、既に人間活動起源の二酸化炭素とスイスの氷河の後退の関係について可能性が述べられている(結果的には間違いであった)。

 温室効果説が飛躍したのは、1967年に真鍋淑郎博士が温度上昇の定量的予測をしてからである。その後も温室効果に関する研究は、ことごとく先に理論があり、それがデータに現れるかどうかが議論された。

 これは19世紀の有名な科学者ポアンカレの提唱した「仮説を検証する」科学手法の変形である。

 ポアンカレの著書「科学と仮説」で示された科学手法は、多くの科学者が信奉している。先に仮説を出し、それを実験や観測で検証するという手法である。

 しかし、複数の要因が現象を起こす地球科学にポアンカレ式の「検証」は困難で、誤った議論に導くことすらある。例えば、ウェーゲナーの大陸移動説がなかなか認められなかったのは、大陸移動を「理論的に説明」出来ず「科学的仮説」として認められなかったからだ。

 それでも温室効果の研究では「より定量的な検証」という形でポアンカレ式が続けられた。平行して、気象学自体も、理論や観測網もおおむね確立して、シミュレーションが主な研究方法となった。そんな気象学者からみれば、データから原因を引き出すのは危険な手段に映るだろう。データに相関が見つかっても、偶然の可能性を先に疑うはずだ。だから、フリスクリステンセン博士の発見した太陽活動との関係を簡単には受け入れ難い。

 一方、私を含むデータ解析系の地球科学者には、

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