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東京の未来には奇抜な新国立競技場がふさわしい

北野宏明 ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長

 東京五輪のためのザハ・ハディド(Zaha Hadid)による新国立競技場設計案の是非が話題となっている。ザハの案に対して建築家の槇文彦さんが反対を表明した(JIA Magazine, 295, page 10-15, August 2013)ことがきっかけとなり、建築家などの共同声明が出されるまでに至っている。確かに、巨大でエイリアンの宇宙船を思わせるデザインには、私も一見して違和感を覚えた一人ではある。

新国立競技場のデザイン=日本スポーツ振興センター提供

 バグダッド出身でイギリス在住のザハは、三次元曲面を多用したスケールの大きいデザインが特徴の建築家だ。2004年に「建築界のノーベル賞」とも言われるプリツカー賞を受賞するなど高い評価を受けている。しかし、そのデザインの奇抜さと実現の困難さもあり、多くの建築が実現されていないことで有名であり、「アンビルトの女王」とも呼ばれている。今までに実際に建築された建物も、デザインの先鋭性は残すもののどちらかというと直線を多用したものになっている。シンガポールに建設中のD’Leedonというコンドミニアムもザハのデザインだが、超高層マンション群という特質上、曲面の使用はかなり限定されている。しかし、最近完成したナオミ・キャンベルの自宅や現在建設中のソウルの東大門デザインプラザ(DDP)など、オリジナルデザインをそのまま実現した建築も現れている。

 さて反対論が出たというので、興味を持って槇文彦さんの論考を読んでみた。その中心にある考えは、神宮外苑という土地の文脈や歴史性を考慮に入れていないということと、人口減少する日本でこれほどの施設を維持できるのかという危惧より成り立っていると理解した。

 二つ目の人口減少の問題に関しては、最終的に適切な設計修正と運営体制を構築すれば心配はいらないであろう。収容人数の合理的な設定、駐車場や付帯設備の再設計など、実際の建築に向けた、調整はシビアに行う必要がある。最近出された3000億円の予算も、全てにバブリーに作った場合であって、実際にはその様な金額にはならないで実現できるであろうし、それが関係者の知恵というものだろう。

 その上で、

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