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子宮頸がんワクチンと自己免疫疾患などの関連を否定した北欧の疫学研究

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

 子宮頸(けい)がんワクチン(HPVワクチン)の接種を「推奨しない」と厚生労働省が6月に決めて4カ月余りたつ。厚労省は10月28日に「接種後に痛みやしびれなどが出たという報告が4~7月で291件あった」と公表した。一方、医学専門誌「BMJ」(イギリス医師会雑誌)10月9日号には、約100万人の10~17歳の女子の追跡調査で「自己免疫疾患や神経疾患がワクチンによって起こるとは認められなかった」というスウェーデンとデンマークの研究結果が掲載された。同じ号で、オーストラリアのHPVワクチン登録プログラムのジュリア・ブラザートン医学部長は、「ワクチン接種が始まった直後は、原因のはっきりしない病気がワクチンのせいとされてしまうことがよくある。追跡調査で、こうした誤った関連づけを排除することは非常に重要だ」と述べ、懸念が出たいくつかの病気とワクチンの関連はないと示す「強い証拠が得られた」と評価した。安全宣言が出された形である。ただし、日本で問題になっている、痛みがあちこちに飛ぶ「複合性局所疼痛症候群」はこの研究では調べられていない。

 厚労省が検討会で明らかにしたデータによると、4か月間の報告291件のうち、けいれんや歩行障害など重症とされたのは143件。接種者数に対する報告の割合は0・014~0・125%で、1~3月に報告されていた割合(0・002~0・015%)と比べて増えた。

 とくに報告が増えたのは6月以降で、推奨中止の報道などで関心が高まったことが影響しているとみられる。報告者の自主性に任せてデータを集める調査では、どうしてもこうしたバイアスが出てしまう。世間で話題になっていると報告数が増え、関心が薄れてくると報告数も減る。これは世界共通の現象で、こうしたバイアスをいかになくすかが疫学研究の重要なポイントになっている。

 スウェーデンとデンマークの今回の研究は、

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