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増えすぎた野生動物にどう向き合うか-「生態系は幻想」という山極発言の衝撃

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

 日本中の森が、シカの食害に悲鳴を上げている。野生動物は大切にしたい、と誰もが思う。だが、増えすぎた野生動物はほかの動植物に害を与える。人間が営む農林水産業にも被害をもたらす。どうすればいいのか? どう考えればいいのか? 今年の朝日地球環境フォーラム(10月1日)では「野生動物と人間の明日を探る」という分科会を企画し、きれいごとに終わらない討論を目指した。

琵琶湖の竹生島とその周辺にいるカワウは08年の7万5千羽から1万3千羽に減った。黒く見える鳥がカワウ。立ち枯れている木も目立つ。

 パネリストに招いたのは、ゴリラの研究で有名な京都大学の山極寿一教授、旭山動物園の飼育係を25年続けたあと、絵本作家として独立したあべ弘士さん、琵琶湖で増えすぎたカワウをエアライフルで撃って減らしているイーグレットオフィス専務取締役の須藤明子さんの3人。

 須藤さんは獣医学博士で、研究者の目で野生動物を見つめてきた。最初はイヌワシの保護活動に取り組んだが、滋賀県の依頼を受け、イーグレットオフィスという会社として琵琶湖のカワウの「個体数調整」に取り組む。2009年からの5シーズンで、4万5000羽余りをチームで捕殺、その結果カワウの数が目に見えて減り、はげ山に緑が戻ってきた。

カワウを狙う須藤明子さん。記録係と2人ひと組で行動する。

 須藤さんはいう。「カワウ全体と共存したいから、あのカワウを殺す。野生動物をひとつひとつ助けていたら環境が良くなるんじゃないかという考えは間違っていた。私があまく考えていたんだなって思う」

 意外だったのは、

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