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「素粒子から宇宙へ」ファビオラ・ジャノッティ博士講演会(上)

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

 カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)がセルン(CERN、欧州合同原子核研究機関)の女性物理学者ファビオラ・ジャノッティ博士講演会「素粒子から宇宙へ ヒッグス粒子と私たちの生活」を11月20日に浜離宮朝日ホールで開いた。朝日新聞社と共催。ファビオラさんの英語による講演を、村山斉IPMU機構長が逐次通訳した。講演内容を上下2回に分けて紹介する。

世界一大きな素粒子物理学研究所

 CERN(セルン、欧州合同原子核研究機関)という研究所は、世界で一番大きな素粒子物理学の実験をしている研究所です。世界中の60カ国以上から1万1,000人の科学者が集まって、一緒に研究をしてきています。

 創設は1954年のことで、最初は12カ国のヨーロッパの国が集まってつくられました。その目的は、第二次大戦で崩壊したヨーロッパが本来持っていたはずの科学の最先端の内容を取り戻そうというものでした。そして現在のメンバー国は20カ国、全てヨーロッパの国ですが、それ以外にもアソシエートメンバーと呼ばれる国もありますし、特に日本などを含めてオブザーバーと呼ばれている国も入っています。

 年間の予算は大体1,000億円程度で、それぞれの国がそれぞれの経済の規模に応じて資金を出すという形で運営されています。この1,000億円というのは、ヨーロッパの市民が1年にカプチーノを1杯飲むぐらいの値段に相当します。ここで平均と強調しているのは、私の国であるイタリアとか南ヨーロッパではカプチーノは安くておいしいのだけれども、北に行けば行くほどだんだんまずくなって、しかも高くなるんです。(笑)

11月20日、浜離宮朝日ホール

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