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日経新聞の「半導体興亡史」に物申す(下)   日米半導体協定は日本の技術開発を停滞させていない

湯之上隆 コンサルタント(技術経営)、元半導体技術者

 前稿に引き続いて、日経新聞のコラム『日曜に考える』の「シリーズ検証 半導体興亡史」の分析が的外れであることを論じる。本稿は「盛衰の岐路 続いた誤算」(1月12日)を取り上げる。

 この回は、日米半導体協定によって日本を叩こうとした米国に対して、日本半導体メーカーには「政府に泣きつく米半導体など何するものぞ」という慢心があったと記載している。

 日米半導体協定とは、1986年に日米間で締結された協定である。日本が使う半導体の2割を外国製にすること、日本の半導体メモリDRAMの価格を監視し一定価格以下にしてはならないことなどが日本に課せられた。

 日本半導体メーカーの慢心については筆者もその通りであると思うが、慢心した日本が壊滅的になるするまでの分析がいただけない。

 まず、日経新聞は、「…現場では思いもしないことが起きていた。元NECの半導体技術者はこう明かす。『日米半導体協定の実像は世界ナンバーワンとナンバー2の国同士による官製談合。競争を抑制した結果、半導体メモリの国際相場は安定し好業績をもたらした。でも技術的な成長は止まった』」と書いている。

 しかし、これまでに筆者がNEC、日立、東芝の開発センターや量産工場の関係者に聞き取り調査をした結果からは、日米半導体協定によって「技術的な成長が止まった」痕跡はどこにも見当たらない。それどころか、

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