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「温暖化防止に原発は必要」という主張の是非(上)

石井徹 朝日新聞編集委員(環境、エネルギー)

 地球温暖化防止と脱原発は両立し得るのか。米国コロンビア大のジェームズ・ハンセン博士ら4人の科学者は昨年11月、「深刻化する温暖化による危険を回避するためには、原発の利用が不可欠だ」とする書簡を発表し、論議を呼んだ。本稿ではその主張を紹介し、次稿でその是非を考えたい。

ハンセン博士ジェームズ・ハンセン博士(コロンビア大のHPから)

 ハンセン博士は、米航空宇宙局(NASA)にいた88年に米議会上院の公聴会で「地球温暖化の原因は、99%の確率で化石燃料の大量消費が関係している」という趣旨の発言をしたことで知られる。これがきっかけとなり、地球温暖化のCO2(二酸化炭素)主犯説が世界に広まった。2010年には、地球環境に貢献した科学者らに贈られる旭硝子財団のブループラネット賞を受賞している。

 米国では、原発からの撤退が相次いでいる。シェールガス革命の影響である。米国内でシェールガスが産出するようになり、コスト面で原発が引き合わなくなったのだ。試算方法にもよるが、原発の発電コストはシェールガスに比べて際だって高くなるという。しかし、シェールガスは化石燃料だ。石炭に比べて二酸化炭素の排出量は少ないとはいえ、燃やせば二酸化炭素が増える。そこにハンセン博士らは危機感を持ったのだろう。

 EU(欧州連合)の各国は、温暖化防止に熱心だ。しかし、原発に対する対応は国によって分かれる。ドイツやデンマークは脱原発に動いているが、英国やフランスは原発の積極利用をうたう。日本は、福島原発事故を起こしたにもかかわらず、脱原発をはっきりと打ち出していない。まずは、ハンセン博士らの書簡を読んでみよう。

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